Research Abstract |
研究代表者の辻川とGannouji氏は,今世紀の物理学の最大の挑戦とも言われる暗黒エネルギー問題に関して,一般相対論を拡張した理論に基づき,その解決への糸口へと迫った.特に,f(R)重力理論,スカラーテンソル理論,ガリレオン重力理論に基づく暗黒エネルギー模型の構築を行った.f(R)重力理論,スカラーテンソル理論では,密度の大きい局所領域でスカラー場の自由度が大きな質量を持つことにより,カメレオン機構と呼ばれる機構で局所重力の制限を満たすことが可能である.我々は,f(R)重力理論に基づく暗黒エネルギー模型を拡張したシナリオにおいて,局所重力の実験的な制限,および宇宙の大規模構造の観測的な制限から,模型のパラメータに対する制限をつけた.特に,観測的,実験的な制限を満たすスカラーポテンシャルを構築し,カメレオン機構が暗黒エネルギー模型に対して有効に働く条件について明らかにした. また,ミンコフスキー時空の極限でガリレオ対称性を満たすガリレオン重力理論において,暗黒エネルギー模型を構築し,そのような模型での宇宙論的なダイナミックスと密度揺らぎの進化について明らかにした.さらに,密度の大きい局所領域においてどのようにヴァインシュタイン機構と呼ばれる機構が働くかを調べ,一般相対論的な振る舞いが回復する領域の半径を導いた.この機構は,質量をもたない粒子に対しても適用が可能であり,今後の実験的,観測的な制限によって,模型に対する更なる制限をつけることが可能であることが期待される. 上記のガリレオン重力理論に基づく暗黒エネルギー模型の宇宙論的なダイナミックスに関しては,辻川が高エネルギー加速器研究機構で行われた国際会議で発表した.
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