2012 Fiscal Year Annual Research Report
胚性プロテアソームによるタンパク質品質管理機構とその機能の解明
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10F00396
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村田 茂穂 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SHIN S.-W. 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | ZPAC / プロテアソーム / 初期胚 / 母性タンパク質分解 / 精子ミトコンドリア / ユビキチン / E3ユビキチンリガーゼ / 受精 |
Research Abstract |
哺乳類における受精直後、卵子に蓄積されていた母性蛋白質は急速に分解され、新たな胚性遺伝子群が活性化される。この時期を遺伝子発現が母性から胚性に移行する時期(Maternal-to-zygotic transition,MZT)と呼ばれており、この時期を経ることによって、生殖細胞に究極に分化した卵子は全ての細胞に分化することの出来る能力(全能性、Totipotency)を持った初期胚にリプログラミングされる。しかし、全能性の獲得に重要なMZT時期における母性タンパク質の分解に関する研究は極端に少ない。これまでの知見では、マウス初期胚でタンパク質のユビキチン化やプロテアソームの存在が認められることが報告され、漠然と母性タンパク質の分解にユビキチンープロテアソーム系が関与する可能性が示唆されているに過ぎず(Solter,D.et al.,2004)、その詳細な分子メカニズムは全く不明であった。最近、我々はMZT時期に特異的に発現する遺伝子の探索から、ZPAC(Zygote-specific proteasome assembly chaperone)タンパク質の同定に成功した。このZPACが受精後の初期胚に特異的な胚性プロテアソームの形成に関与することと、さらにZPACをノックダウンするとユビキチン化されたタンパク質が蓄積され、初期胚は発生しないことを明らかにした。このようなことから、ZPACが形成に関与する胚性プロテアソームによって受精後に大量のタンパク質が分解されることで、初期胚の正常な発生が保証されることが初めて示唆された。 そして、受精直後精子ミトコンドリアの分解の際に、精子ミトコンドリアはユビキチン化されオートファジーにより分解されることが報告されている。しかし、その詳細な分子機構は未知であったが、我々は初めて、受精直後精子ミトコンドリアがユビキチン化されるためのE3ユビキチンリガーゼの同定に成功した。このようなことから、精子ミトコンドリアの分解の機構がより明らかになることが期待される。このように、マウス初期胚の発生段階においてユビキチンープロテアソーム系は最も重要であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
Shin研究員はマウス初期胚や精子などの生殖細胞を用いたユビキチンやプロテアソームの研究を行った。 マウス初期胚や生殖という細胞は一般細胞よりタンパク質の量が少ないため実験を行うことがかなり困難であるが、Shin研究員はこのような問題点を乗り越え優れた研究成果を出している。特に、精子ミトコンドリアの分解は予測した以上順調に進んでおり、更なる発見が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
マウス初期胚ではプロテアソームが胚発生においてもっとも重要であることが明らかになった。今後、マウス初期胚においてプロテアソームが母性タンパク質分解にどのように関与するかを明らかにしていく予定である。そして、我々が同定した精子ミトコンドリアの分解に関与するE3ユビキチンリガーゼも実際にどのように精子ミトコンドリアの分解関に与するかを検討する予定である。
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