2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10F00415
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
大富 潤 鹿児島大学, 水産学部, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
HOSSAIN M.Y. 鹿児島大学, 水産学部, 外国人特別研究員
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Keywords | クルマエビ科 / クルマエビ / 干潟 / 生残率 / ポストラーバ / 稚エビ / 着底 / サルエビ |
Research Abstract |
本研究は,クルマエビの持続的管理に必要な干潟域におけるポストラーバの着底メカニズム,生残率等を含めた個体群動態機構を解明することを目的としている。さらに,干潟域を成育場としない同科のサルエビの分布・動態に関する知見を得ることで生態特性の異なる種についての持続的な資源管理方策の構築を目指す。前年度までに,複数年の採集データを込みにして干潟域におけるクルマエビのポストラーバ期から稚エビ期にかけての生残率の推定を試みたが,初期の生残率の適合度が低かった。そこで,平成24年度は14種類の連続型確率分布を用いて再解析を行なった。χ^2統計量の値により適合度を比較した結果,ワイブル分布が選択され,着底から体長(BL)50mmまでの生残率は約1.4%と推定された。次に,本種では浮遊生活から底棲生活に移行する際にポストラーバの期間中に何らかの形態変化が生じると考え,特に第6腹節の長さに着目して人代海南部の砂質干潟で採集した天然の個体および財団法人鹿児島県栽培漁業協会より提供された人工飼育の個体を用いて実体顕微鏡下で体の各部位の観察を行った。第6腹節長(SAS)の比較長SAS/BLとBLとの間には正の相関関係が見られたが,八代海のものではBL12mmと23mmに変調点があり,3相に分けられた。また,人工飼育のものではBL6mmと23mmに変調点が見られ,同じく3相に分けられた。BL6.mm未満の個体ではSAS/BLとBLとの間に相関関係は見られず,BL6mm以上で相関が見られるようになった。この境界値は着底の最小サイズと一致することから,第6腹節の比較長は浮遊生活から底棲生活への移行と何らかの関係があるのかもしれない。さらに,BL12mmと23mmにも変調点が見られ,大きくなるにつれて回帰直線の傾きが小さくなった。サルエビに関しては,時空間分布と産卵場に関して投稿原稿を作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,開始以前から行ってきた八代海におけるクルマエビ,特にポストラーバや稚エビの標本とデータを用いて生活史初期の個体群動態機構の解明を行うことを主目的としている。平成24年度は,干潟域におけるポストラーバ期から稚エビ期にかけての生残率が推定できた。また,成長にともなった第6腹節の比較長の変化が見出され,浮遊生活から底棲生活への移行に関連した形態変化である可能性が示唆された。後者にはまだ課題は残るが,ほぼ順調に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
八代海をフィールドとし,干潟域における底棲動物の分布とクルマエビの体長組成,生残率,ポストラーバ期および稚エビ期の成長にともなう形態変化の観察などを行い,学会にて成果発表を行ってきた。今後はこれらの成果を論文として発表する予定である。さらには,本研究で得られた生物学的知見に基づき,本種資源の持続的管理方策を構築したい。
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