2011 Fiscal Year Annual Research Report
ネーションを超えて生きること・感じること : 現代日本におけるコスモポリタニズム
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10F00748
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 哲哉 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
HIDEKO Mitsui 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | コスモポリタニズム / 民俗誌的方法 / 文化人類学 / 消費文化 / 政治文化 |
Research Abstract |
1990年代後半以降「コスモポリタニズム」または「世界市民主義」は「ポスト国家」主体のメンタリティとして様々な学術領域において「時代のキーワード」とされてきた。政治思想においては(1)グローバル民主主義の理想への忠誠と(2)国家や特定の人種宗教などを基盤とした集合体への帰属を超越する規範の尊重、として定義されてきており、文学や社会学ではポスト・コロニアル、ポスト・ナショナルな主体のありかたとしてこの概念は活発に議論されてきたものの、Kwame Anthony Appiah氏が提案する「実在するコスモポリタニズム」の研究、即ち、実際に人々がどのようにして自身の国家への帰属と、グローバルな市民社会の一員であることを「経験」しているかについての民族誌的研究は殆どなされてこなかった。そこで本研究課題は、特定の文脈における「経験」「実践」としてのコスモポリタニズムを検証することを目的とし、エスノグラフィックな(民族誌的)研究を行う。具体的には日本における二つの社会学的「フィールド」、すなわち(1)政治的・法的なものと(2)文化的・美的なそれに焦点を絞り、それらの空間でどのように「国家」への帰属意識と、「国家」の枠を超えることへの欲望がときに矛盾を呈しつつ相互作用するかを調査する。平成23年度には科研費を活用して関連書籍や資料の収集、研究環境に必要な備品購入、フィールドワークのため適切な機関や団体を訪問、資料収集の分析を経て、アメリカ人類学会(年次大会)に参加し研究経過の報告をし、その分野の第一人者である研究者と執筆、出版に関して打ち合わせを行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
インタビュー、参与観察などを含めた調査と研究を順調に進めていたところに3月11日の地震のため当初協力予定だった情報提供者の状況が変わるなどの変更があったものの全体的には順調に研究が進行。10月の「神話と儀礼」に関する学会で講演。昨年度中に学術誌の査読を通過した論文を23年度中に推敲し11月に提出済み。11月学会で発表したペーパーは論文として推敲後にイギリスで出版される同テーマについての編著書に掲載予定。
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Strategy for Future Research Activity |
現代日本社会が研究対象である課題の性質上、3月11日以降の日本社会の変化を考察しその内容を研究に反映させることが必然と思われたため新たに文献や資料を収集することとなる。その結果研究内容はより充実したものになりつつあるが、新しい知見を鑑みた出版実績を効率的にあげるべく学術誌や編著書の編集者に積極的に連絡をとることを今後の対応策としていく予定。
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