2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10F00775
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐々木 節 京都大学, 基礎物理学研究所, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ALABIDI Laila 京都大学, 基礎物理学研究所, 外国人特別研究員
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Keywords | インフレーション宇宙 / 宇宙背景輻射の揺らぎ / 宇宙論的重力波 / 宇宙論的揺らぎ |
Research Abstract |
近年の宇宙論的観測の進歩によって,インフレーション宇宙理論の証拠が続々と見つかりつつある。特に,インフレーション理論が予言する宇宙の曲率揺らぎの生成やそのスペクトルは,マイクロ波背景放射の揺らぎの観測データを非常によく説明する。しかし現状ではまだ,インフレーションを引き起こす場,インフラトン場が何であるかを特定するまでには至っていない。この現状の下,本研究では,様々なインフレーション宇宙モデルに関して,それらのダイナミクスをはじめとして,曲率揺らぎの統計的性質や重力波揺らぎのスペクトルを系統的に調べ,それぞれのモデルがどのような理論的予言をするか,また,それらがどのように検証できるかを明らかにすることを目指して研究を進めた。そして以下の成果を得た。 「2次の宇宙論的摂動からの重力波」 インフレーション宇宙では、宇宙の構造形成の種となる曲率揺らぎに加えて、時空の量子揺らぎが増幅し、現在重力波として観測されると期待されている。さらに、モデルによっては、摂動の2次で生成される重力波も将来的に観測可能と考えられている。しかし、摂動の振幅が大きすぎると原始ブラックホールの過剰生成が起こる。そこで、この2次摂動からの重力波を正確に評価し、原始ブラックホールの 過剰生成の制限にかからない範囲で、実際に観測可能かどうかを調べた。その結果、いくつかのモデルで、DECIGO,BBOやLISAなどの将来のスペース重力波干渉計で十分観測可能であることを明らかにした。 「複数場インフレーションモデルにおけるトライ・スペクトル」 最近、インフレーション宇宙からの揺らぎの非線形性、特にその統計的非ガウス性の検出可能性が盛んに議論されており、曲率揺らぎの3点関数(バイ・スペクトル)に関しては、一般的な性質がかなり分かってきた。そこで、本研究では、場が2つある場合の一般的インフレーションモデルにおける曲率揺らぎの4点関数(トライ・スペクトル)に着目し、その性質を詳しく解析し、それがどのような場合に大きな値を取るかを系統的に明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
宇宙論的揺らぎの2次の項から生成される重力波を正確に導出したのは、非常によい成果である。これは、将来の重力波観測実験でインフレーションモデルが決定される可能性を与え、最低でもモデルの有益な制限が得られることを意味する。また、スカラー場が複数ある場合の3次の非ガウス性(4点関数)の導出は、今後の宇宙背景輻射の観測を使えば、複数スカラー場モデルへの強い制限を与える可能性があり、重要な成果である。こうした成果が得られたので、当初計画通り順調に進展したと評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
本計画は、本年度で終了であるが、新たな、より精度の高い観測データが続々と出つつあることを考えると、本研究をさらに進めて行くことには、十分な意味があると考えている。
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Research Products
(5 results)