2011 Fiscal Year Annual Research Report
脳ステロイドホルモン合成の増強によるアルツハイマー病治療法の研究
Project/Area Number |
10F00803
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川戸 佳 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
BARRON Anna 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 外国人特別研究員
|
Keywords | アルツハイマー / 性ステロイド / 老化 / 海馬 / アミロイドβ / TSPO |
Research Abstract |
(1)アルツハイマーモデルマウスTg2576(ヒトAPP導入型メス)を用いて、神経シナプスへの)アルツハイマー病の影響を解析した。シナプス後細胞=スパインの減少を詳しく解析した。アルツハイマー病が発症する老齢12か月のマウスでは、正常老化マウスと比較して、神経スパインが減少し、スパイン頭部直径でsmall-head(0.2-0.4um),middle-head(0.4-0.5um),large-head(0.5-1.0um)と分類した結果、large-headスパインが選択的に減少することを発見した。このlarge-headスパインは特に記憶能力が高いものなので、アルツハイマー病による記憶力の減退をよく説明できる。(2)アルツハイマーモデルマウス3xTg AD(オス)を用いて、老化の影響を解析した。コレステロールをミトコンドリアに運ぶTrans locator protein receptor(TSPO)は、アミロイドβの蓄積を減少させることを見出した。Ro5-4864というTSPOアゴニストを週1回1月注射することにより、若い7ヶ月齢および老化した12ヶ月齢ともにアミロイドβの蓄積を減少させることを見出した。(3)TSPOのmRNAの海馬での発現は非常に多いことを発見した。またTSPOは老化に伴い、むしろ発現が110%へ上昇することを見出したので、老化マウスでもRo5-4864の効果があることを説明できる。これまでは、TSPOの放射性リガンドを用いた結合分布に基ずき、TSPOは脳ではグリア細胞に非常に少ない量で発現しているのみであると思われていた。TSPOは良い抗体も存在しない。今回はプライマーを特別に設計してRC-PCR解析を行ったところ予想外の高発現で、脳ステロイド合成酵素の中でも一番発現量が多かった。(4)神経行動学的解析によって、精巣摘出をいったラットにRo5-486を皮下投与したところ、認知成績が向上することを見出した。これを男性ホルモンの増加と関連ずけることを目指している。(5)Ro5-486を皮下投与した場合、コレステロール→プレグネノロン→プロゲステロンとDHEA→テストステロン、というカスケードでテストステロンが増加して、これが海馬でのアミロイドβの蓄積を減少させ、海馬記憶機能を活性化するものと、解釈できる。もう一つはプロゲステロンそのものが保護活性を持つのかもしれない。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初期に計画した「コレステロール輸送増強剤Ro5-486の投与による、コレステロール→プレグネノロン→プロゲステロンとDHEA→テストステロン、合成の増加を介した、これが海馬でのアミロイドβの蓄積を減少と、海馬記憶機能の活性化」、というストーリーを、かなりの部分検証できつつあるから。
|
Strategy for Future Research Activity |
Ro5-486やテストステロンの投与による、アミロイドβの蓄積の減少が、ミクログリアの活性化やアストログリアの活性化によるものであるかどうか?あるいは神経への直接作用であるのかどうか?を、これらの活性化マーカーを調べて、はっきりさせることも重要であると考えている。
|