2011 Fiscal Year Annual Research Report
空なる指示形成・京都学派の哲学者たちのアウグスティヌスからの読解
Project/Area Number |
10F00816
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
杉村 靖彦 京都大学, 文学研究科, 准教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
GIRAUD Vincent 京都大学, 文学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 京都学派の哲学 / アウグスティヌス / 現代フランス哲学 / 西田幾多郎 / 西谷啓治 / 空なる自己 |
Research Abstract |
本研究の狙いは、京都学派の哲学と現代フランスの諸哲学者を往還しつつ、現代の哲学的状況を見据えてそこでアウグスティヌスの思想がもちうる意義を再考しようとする点にある。昨年度は、西田、田辺、西谷の著作でのアウグスティヌスへの言及を網羅的に探査し、それらをフランス語に訳しつつ、そこからアウグスティヌスの「自己」論の創造的解釈に資する要素を引き出すことに努めた。その成果を踏まえつつ、本年度は、デリダやリオタール、マリオンら現代フランスを代表する思想家たちの独創的なアウグスティヌス論を検討し、彼らが模索するモダンな主体概念の解体後の「自己」論を、絶対無の自覚や空なる自己といった京都学派の哲学固有の問題系と突き合わせて考察することを試みた。この作業は、研究分担者が博士論文をもとにしたアウグスティヌス論を執筆中(今秋にフランスで刊行予定)であったので、そこでの考察と照らし合わせて進めることで、厳密な文献的研究と創造的な現代的活用の両方に目配りした、充実した考察へと展開することができた。 さらに、本研究の成果は、研究代表者と分担者の双方の研究活動に反響して、当初の予想を超えた広がりを見せている。研究分担者の方は、もとはアウグスティヌス的な自己論とその現代的展開という文脈から京都学派の「空なる自己」に関心を寄せていたのだが、本年度の共同研究を通して、西田らにおけるより広い意味での西洋中世哲学の受容の独自性へと目を開かれていった。また、研究代表者の方も、中世哲学の豊かな学識をもつ分担者とともに西田らのテクストを検討していく作業から大きな刺激を受け、自身の京都学派研究にフィードバックさせつつある。こうした経緯は、とくに双方が海外の国際学会で行った講演・発表に色濃く反映している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」欄に記したように、当初の計画における研究課題を果たしただけでなく、さらに研究を進展させ、研究代表者と分担者の双方において、新たな研究課題の開拓へとつなげることができたから。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者と分担者の双方とも、本研究を通して得られた知見を国際学会で積極的に発表してきたが、幸い好意的な反応がえられている。今後はわれわれが主催する国際学会を京都で開催する可能性を探り、そうした形での他の研究者との交流をも本研究にフィードバックさせることにより、本研究の一層の推進を図りたい。
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Research Products
(7 results)