2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10J00015
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
松尾 功二 北海道大学, 大学院・理学院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 宇宙測地学 / GRACE / GPS / 合成開口レーダー / 重力変化 / 地殻変動 / チリ地震 / 北極振動 |
Research Abstract |
本年度は主に、1.陸水荷重による季節的地殻変動、2.2010年チリ地震に伴う重力変化、3.北極振動がもたらす積雪量異常、の3件について研究を行った。1.大気を介し海洋から大陸へともたらされる季節的な降雨/積雪は、GRACEの重力変化とGPSの地表変位という2つの異なる測地学的信号として検出される。私は、前者が表層質量の再分布を、後者が表層質量による地殻の弾性応答を捉えているものと考え、地球の弾性変形理論を通じて両者が整合的であるか検討を行った。その結果、両者に高い整合性が確認され、さらに、エルニーニョ南方振動に伴う降水量異常のような非季節性の陸水変動に関しても調和的であることが分かった。本研究は、商業誌月刊地球にて掲載されている。2.2010年2月27日にチリ中部で発生した巨大地震は、大規模な地殻変動を伴い、GRACEで検出可能な重力変化を引き起こした。本研究では、この地震に伴う地殻・マントル間の質量構造の変動機構を解明するために、球対称地球モデルとGPSの地震時地殻変動データから構築した矩形断層モデルを用いて、GRACEの観測結果の再現を試みた。その際、観測されたGRACEデータに占める陸水起源の重力変化を適切に補正することが重要となる。私は共同研究者として、この陸水成分の補正に従事した。本研究は、国際誌Geophysical Research Lettersに投稿され受理された。3.北極域と中緯度域間で起こる海面更正気圧(SLP)のシーソー的変動を北極振動(AO)と呼び、SLPが北極域で例年より低く中緯度域で高くなったときを正のAO、その逆を負のAOと言う。AOは、北半球における冬季の気候に支配的な影響を及ぼし、その規模と傾向(正負)に応じて各地に強い寒波と積雪量の異常をもたらす。本研究ではGRACEを用いることで、AOの正負に応じた積雪量異常の特徴的な空間パターンを見出すことに初めて成功した。さらに、GPS局の地表変位や地球の励起極の移動など他の測地観測からも同様の特徴を見出した。本研究に関しては、現在論文執筆中である。
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Research Products
(12 results)