2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10J00015
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
松尾 功二 北海道大学, 大学院・理学院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 宇宙測地学 / 重力衛星GRACE / GPS / 重力変化 / 地殻変動 / 北極振動 / 東北地方太平洋沖地震 |
Research Abstract |
本年度は重力衛星Gravity Recovery and Climate Experiment(GRACE)で見る、1.北極振動に関連した降雨・降雪量異常、2.2011年東北地方太平洋沖地震に伴う重力変動、に関して研究を行った。1.高緯度・中緯度間で起こる大気圧のシーソー現象を北極振動と呼び、北半球のとりわけ冬季に卓越し様々な気候変動をもたらす。我々は、GRACEによる冬季の重力データから北極振動がもたらす降雨・降雪量異常のシグナルを捉え、北極振動の正のフェーズで高緯度/中緯度地域に正/負の重力偏差が、負のフェーズで逆の偏差パターンがもたらされることを突き止めた。このような傾向は、GPSの上下変位や、地球の極移動としても捉えられることが分かった。本研究成果は、Geophysical Journal Internationalに投稿され、現在改訂中である。2.地震動を起因する断層運動は、地球の表層・内部における質量構造の大規模な変動を引き起こす。そのメカニズムは、(1)密度差のある層境界の上下変動、(2)体積ひずみに伴う岩石の密度変化、によって説明できる。(1)は、地表(海底)面の隆起/沈降、モホ面の隆起/沈降によるものであり、波長の短い重力増加/減少として現れる。一方、(2)は、地殻物質の膨張/圧縮、マントル物質の圧縮/膨張によるものであり、波長の長い緩やかな重力変化として現れる。2011年東北地方太平洋沖地震は、有史以来日本で起こった最大の地震であり、GRACEで観測可能な重力変動を残した。GRACEによると、本地震に伴い東北地方で最大約7μGalの重力減が生じた。数値シミュレーションより、これは主に(2)の体積ひずみに伴う岩石の密度変化を反映していることを突き止めた。本研究成果は、Geophysical Research Lettersに投稿され、受理された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
北極振動に関する研究は着手して1年以上経っているにも関わらず、私の論文作成が遅れたため、未だに受理されていないでいる。少なくとも本年度中には改訂を終え、出来るだけ早い受理を目指していきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
重力衛星GRACEが打ち上げられ運用し始め、約10年が経とうとしている。データの蓄積と解析技術の向上に伴い、これまで見えなかった小さなシグナルを捉えることに成功しつつある。我々は、北極圏に存在する小氷河帯(Iceland,Svalbard,Russian Arcticなど)の重力場が、僅かに減少傾向を示すことを発見した。その重力減の空間パターンは氷河の空間分布と一致しており、それらの地域で氷河融解が起きていることを示唆する。GPSや合成開口レーダー等の他の測地データを組み合わせ、GRACEデータの示すシグナルの正当性を議論し、より詳細に解析を進めていきたいと考えている。
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