2010 Fiscal Year Annual Research Report
実験内分泌学的手法と形態学的解析法を活用した小胞体ストレスへの新たなアプローチ
Project/Area Number |
10J00033
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
暮地本 宙己 旭川医科大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 下垂体前葉 / 性腺刺激ホルモン産生細胞 / 細胞内膜系小器官 / 粗面小胞体 / 実験内分泌学的動物モデル / GnRHアゴニスト / 電子顕徴鏡観察 / 免疫組織化学 |
Research Abstract |
粗面小胞体は様々な膜蛋白や分泌蛋白の合成を行う細胞内膜系小器官であり、生体では細胞の種類や機能状態に応じて多様な形態をとる。本研究では、分泌蛋白を大量に生合成し、かつその合成量や分泌量が特異的な調節因子により制御されているペプチド性内分泌細胞に着目して、実験内分泌学的操作で生じる粗面小胞体の微細構造や機能分子局在の変化を解析し、より生体に即した条件で小胞体ストレス応答機構の詳細の解明を試みている。 平成22年度にはGnRH誘導体である酢酸リュープロレリンの持続的投与あるいは去勢術を施したラットモデルを作製し、免疫組織化学法および電子顕微鏡観察で解析した。その結果、両方のモデルで処置後初期に下垂体前葉のLH/FSH産生細胞におけるホルモン分泌・産生が刺激されて一過性に複雑に絡み合った網状の特殊な小胞体塊が出現し、分泌蛋白の生合成が急激に促進されると粗面小胞体の膜量が飛躍的に増加する応答が生じることが示唆された。しかし、その後分泌蛋白の生合成が持続的に亢進する去勢されたラットの同細胞では粗面小胞体の内腔が拡張・融合し、印環状の特徴的な洞様構造物が形成されるのに対し、分泌蛋白の生合成が持続的に抑制される酢酸リュープロレリン投与ラットの同細胞では粗面小胞体内腔は顕著に狭小化し層板状の構造を呈した。今後は、さらにこの対照的な変化を踏まえて上記の実験内分泌学的操作を組み合わせ、去勢手術によってペプチドホルモン生合成が促進され肥大化した粗面小胞体が、その後GnRH誘導体持続投与でホルモン生合成が抑制された場合に、どのような過程を経て縮小するかを検討する予定である。また、この解析と並行して、LH/FSH産生細胞以外の下垂体前葉の内分泌細胞に関しても、特異的な刺激後に粗面小胞体の微細構造や機能がどのように変化するか同様に解析し、細胞種による応答の差異を明らかにする計画である。
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