2010 Fiscal Year Annual Research Report
冷戦終結後のコーカサスにおける「新しい戦争」とその「管理」
Project/Area Number |
10J00157
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
富樫 耕介 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 民族紛争 / チェチェン紛争 / コーカサス / 新しい戦争 / マスハドフ政権 / 国家の解体 / 平和構築 / 未承認国家 |
Research Abstract |
初年度は、1、これまでの研究成果の公表、2、今後の研究課題への取組み、3、資料の収集に取組んだ。1については、まず、ソ連期のチェチェンからその後発生する紛争への理解を試みる論文「ソ連期のチェチェンにおける政治・経済・社会構造」が掲載された。本論は、チェチェンがソ連時代に特徴的な政治・経済・社会構造を持っていた点を明らかにし、これは後の民族運動の発展に影響を及ぼした側面はあるものの、紛争発生とは直接的な関係性がないという結論を提示した。次に、紛争を理解する際の社会文化的特徴の重要性とその評価をめぐる問題についてまとめた論文「社会文化的要因からの第一次チェチェン紛争の考察1が掲載された。本論は、第一次チェチェン紛争が発生した際、盛んに議論された紛争地の社会文化的特徴について紛争理論を用いつつ検証し、これが実は紛争の発生に直接的影響を与えていなかった事を明らかにした。最後に、チェチェンの隣国イングーシがなぜ現状においてここまで不安定な状況となっているのか、コーカサス地域における紛争の共振と連邦による政策の観点から考察した論文「イングーシ共和国における政治的危機とその背景」が掲載された。 2については、コーカサス地域の紛争を巡る重要な課題である未承認国家について、先行研究では殆ど扱われていないチェチェンを主要な対象とし、国際政治理論によるアプローチと他の事例との比較によるアプローチを用いつつ取組んでいる。また、チェチェン紛争研究については、マスハドフ政権(1997-99)の平和構築についてその取組みと挫折を重点的に調査している。これらについては、北大や専修大での研究会及びシンポジウムにて報告を行った。 3については、2010年7~10月にロシア、アルメニア、グルジア、キルギスなどを訪問し、資料収集に当たった。主にコーカサスの紛争(特にチェチェン)に関する文献と新聞資料を収集した。
|
Research Products
(7 results)