2011 Fiscal Year Annual Research Report
量子可積分系の相関関数の厳密な解析と強相関電子系および量子スピン系への数値的応用
Project/Area Number |
10J00176
|
Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
佐藤 純 お茶の水女子大学, 大学院・人間文化創成科学研究科, 特別研究員PD
|
Keywords | 可積分系 / 相関関数 / ベーテ仮設 / ソリトン / 一次元ボース気体 |
Research Abstract |
可積分スピン1XXZ鎖の一点関数を表す多重積分を解析的に実行した。さらに、対応するハミルトニアンの厳密対角化を行うことにより、得られた解析的な表式を数値的に確かめた。マッシブ領域におけるベーテ方程式のストリング解の数値解法を開発し、基底状態のベーテ根を厳密に計算した。また、スピン-1/2ハイゼンベルク模型の2点相関関数の厳密計算の結果を、有限温度および有限サイズの場合に拡張することに成功した。 一次元リング上でデルタ関数型で相互作用するボソン系はリープ・リニガー模型と呼ばれ、ベーテ仮設法により厳密に解くことができる。一方、ボソン場演算子が満たす運動方程式に於いて、古典極限をとると非線形シュレディンガー方程式が得られ、古典ソリトン解を持つことは古くから知られている。ところが、この古典ソリトン解が元々の量子場理論に於いてどう対応するのかは未解決の難問であった。この系に於いて、古典ソリトンに対応する量子局在状態をベーテ状態の重ね合わせによって構成することに成功した。そして、その厳密なダイナミクスを計算し、孤立量子多体系の緩和ダイナミクス、および再帰現象を観測した。 TASEPと呼ばれる一次元排他的確率過程に於いて、形状因子展開と代数的ベーテ仮説の行列式公式を用いてそのダイナミクスを厳密に計算した。 直流電流により誘起されるナノ狭窄磁壁中の磁化のダイナミクスを数値シミュレーションによって解析した。また、磁気記録素子としての熱特性をモンテカルロシミュレーションにより調べた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
古典ソリトン解に対応する量子状態を構成することは非常に困難と考えていたが、成功したため。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は、スピン-1/2ハイゼンベルク模型の有限温度相関関数を厳密に計算することに成功した。続けて、絶対零度2点相関関数の漸近振幅を厳密に導出することを目指す。リヨングループによって有限磁場下での漸近振幅が得られているが、これを零磁場の場合に拡張し、ルキヤノフによる積分表示と比較する。
|