2011 Fiscal Year Annual Research Report
持続可能な社会構築のための環境基本計画策定過程のあり方に関する研究
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10J00206
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
小野 聡 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 環境計画 / 市民参加 / 協働 / ワークショップ |
Research Abstract |
2011年度は、当初の研究計画での「事例研究」「参与観察研究」に加えて、「全国調査」に着手した。 「事例研究」においては、分析対象事例である愛知県日進市における、環境基本計画の実行段階における各主体のインタラクションを調査し分析を行った。また、昨年度までの研究成果を元に、計画策定プロセスの分析を投稿論文にまとめ、5月に学術雑誌に掲載されるに到った。以上の成果は9月に発行した博士論文にて編集され、発表されている。 加えて「参与観察研究」では、静岡県沼津市におけるこれまでの参与観察を踏まえて、行政職員や市民など、これまで計画推進に携わってきたメンバーによる、プロセス評価の場である「振り返りワークショップ」を企画し、実施した。このワークショップは、計画の策定および協働プロジェクトの立案までを行ったこれまでの経緯を踏まえて、これまでに参加者らが達成してきたポイントを確認し、これからの活動につなげられるように設計された。 また、昨年度は「全国的な文献調査」にも取り掛かった。これは当初の研究計画においては位置付けられていなかったが、当初事例として掲げていた愛知県日進市の事例のようなタイプの市民と行政の協働を相対化するプロセスが必要であると判断されたため実施した。全国調査を通して解決すべき課題として、(1)「計画策定の中で市民の特別な組織化を経ずに、計画推進での協働を実現している事例の分析」、および(2)「計画推進での協働の類型化」を掲げたが、昨年度は(1)の課題について、埼玉県比企郡小川町における事例研究を推進した。この研究は、当事例における有機農業プロジェクトと環境計画の関係を示したものであるが、リーダーのもと形成された強固であるが閉鎖的なコミュニティを形成していた有機農業支援者らが、環境基本計画の策定などの場によって他分野のメンバーとの交流が深まり、価値が多様化してゆくプロセスが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究はおおむね期待通りに進展したと評価する。昨年度は愛知県日進市の事例研究を、環境基本計画の実行段階までの分析を完成させる計画を立てていたが、これをおおむね完了させ、博士論文としてまとめ、学位を取得した。また、静岡県沼津市における環境基本計画の参与観察研究においても、計画の事後評価のための「振り返りワークショップ」の企画に精力的に参加し、分析データの収集に努めた。この成果を発表するため、現在参加者へのヒアリングを準備している。以上二点を鑑み、この研究はおおむね順調に進捗していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
「事例研究」「参与観察研究」および、2011年度から始めている「全国調査」研究のなかでも、全国調査を中心的に推進し、事例研究の中で得られた知見の相対化を試みる。 具体的には、全国における環境基本計画の策定状況を調査し、構築されている推進体制の状況を整理する。その際の視点としては、先の研究実績概要で説明したような、計画推進において市民と行政が協働を行ってゆく際、計画策定の中で市民の特別な組織化を経たか否かに着目する。これは、市民活動が計画策定までにどのような高まりを見せていたかなどの、地域固有の要素にも影響を受けると考えられるが、類型化を試みてゆきたい。
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