2011 Fiscal Year Annual Research Report
フランス条件不利地域における農業の多面的機能に関する地理学的研究
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10J00291
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
市川 康夫 筑波大学, 大学院・生命環境科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | フランス / 条件不利地域 / マッシフ・サントラル / 畜産経営 / 集落営農 / 出作り / 漁村地域構造 |
Research Abstract |
本年度は、(1)EU共通農業政策以降のフランス条件不利地域における農業・農村構造の解明に関する研究、(2)中山間地域における集落営農研究、(3)昭和戦前期の日本山村における出作りに関する研究、(4)廻り船寄港地であった商業港平潟の漁村地域構造研究、を行った。(1)に関しては、リヨンを拠点としながら、マッシフ・サントラルの中南部に位置するオート・ロワール県にてフィールド・ワークを行った。聞き取り調査は、40世帯28農場に対して1)農業・畜産に関する経営項目、2)政策と経営変化に関する項目について各農場で2~3時間のインタビュー調査を実施した。このうち1)の成果の一部は日本地理学会春季学術大会にて発表し、学術誌「地学雑誌」に投稿した。(1)の研究調査からは、フランス条件不利地域問題の中心であるフランス山村において、1960年代以降の生産主義的政策が1980年代以降に生産抑制政策へと転換し、さらにWTOの貿易ルール規制によって環境政策が台頭したことで、当該地域の肉牛飼養経営・羊飼養経営の増加、法人経営ガエクの発展、生産物の質的転換、環境遵守事項の強制による経営圧迫など様々な側面において影響が存在することが明らかとなった。(2)に関しては、学術誌「地理学評論」へと掲載され、(4)については「地域研究年報」に論稿が掲載された。(3)については長野県清内路村で現在も継続されている遠距離通耕の一種である出作りが、1)明治期の「煙草出作り期」から、2)大正~昭和30年代にかけての「養蚕出作り期」、昭和40年代から昭和60年代にかけての「出作り衰退期」、4)そして昭和60年代以降の「通い耕作中心期」へと推移してきたことが聞き取り調査より明らかとなった。この調査に関しては2012年5月に再度調査を行い、清内路の区有文書を中心に統計的な裏付けと資料収集を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度で特に重視していたフランス条件不利地域における農家経営と政策による経営変化に関するデータ収集が順調に進んだことが第1の理由である。また、年度内にフランス山間地域における研究調査の一部を論文にまとめ学会誌への投稿が完了したことが第2の理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
EU共通農業政策以降のフランス条件不利地域農村の構造変容に関する博士論文を、本年中に執筆する。また、フランス農業・農村政策の展開とこれら政策よるオート・ロワール県の農畜産経営への影響分析に関する研究を論文にまとめ、年内に学会誌へと投稿をすることを研究方策とする。今のところ研究遂行における大きな変更・問題点はない。
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