2011 Fiscal Year Annual Research Report
チベット空気シャワー観測装置による宇宙線加速と高エネルギーガンマ線放射天体の研究
Project/Area Number |
10J00343
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
佐古 崇志 横浜国立大学, 工学研究院, 特別研究員(PD)
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Keywords | 宇宙線 / 加速機構 / 超新星残骸 / 異方性 / 高エネルギーガンマ線 / 空気シャワーアレイ |
Research Abstract |
チベット空気シャワーアレイは、中国チベット自治区ヤンパーチン高原(海抜4300m)に位置する約800台の0.5平米シンチレーションカウンターを7.5m間隔で並べた有効面積37000平米の空気シャワーアレイであり、宇宙線(陽子やヘリウム等の原子核)およびガンマ線を広視野で連続観測している。現在我々のグループでは、チベット空気シャワーアレイの100TeV領域宇宙ガンマ線に対する感度を向上させるため、総面積1万平米の地下水チェレンコフミューオン観測装置を計画している。2010年度にミューオン観測装置の三分の一の建設がほぼ終了しており、本年度夏の観測開始を目標としていた。研究者は5月末から7月初めにかけて現地に滞在し、グループ内の他の研究者5名とともにミューオン観測装置内センサーの取り付けや、地表のシンチレーション検出器の再配置に携わった。これらの作業は順調に進んだが、諸事情によりミューオン観測装置への水の注入がすぐにはできない状況となり、本年度中の観測開始を断念せざるを得なくなった。2012年度早期の観測開始を目指している。 2007年9月にチベット空気シャワーアレイの南西の端に100平米のプロトタイプミューオン観測装置を建設し、2010年3月までデータを取得した。このデータから得られる空気シャワー中のミューオン数と、空気シャワーアレイから得られるシャワーの横広がりなどのパラメータを用いてバックグラウンド宇宙線を除去することで、TeVガンマ線に対する感度がどのくらい向上するかを調べた。その結果、10TeV-100TeVで1.2倍-1.7倍の感度向上が見込めることが分かった。 前年度までに行なった宇宙線の異方性に関する研究成果を、国際会議ICRC2011にて口頭発表した。この研究成果に対して日本物理学会第5回若手奨励賞が授与され、弘前大学にて開催された日本物理学会秋季大会で招待講演を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
空気シャワーアレイの位置するチベット羊八井高原(標高4300m)の環境は日本とは全く異なるものであり、大面積の地下水槽の完成に予想以上の時間と労力を要しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
ミューオン観測装置の稼働開始時期は2011年度夏を予定していたが、注水関係のトラブルなどにより一年ほど遅れることが予想される。2012年度には観測を開始し、データ取得および装置のメンテナンスと並行して新たなデータ解析手法を確立していく。また、実験データから天体のフラックスなどを導出する際には大量の空気シャワーシミュレーションが必要である。空気シャワーアレイの検出器シミュレーションは既に確立されているが、ミューオン観測装置の検出器シミュレーションは高速化の余地があるので、必要に応じてプログラムコードの改良も行う予定である。
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