2011 Fiscal Year Annual Research Report
ストレス蛋白質に注目したNSAIDsの多彩な薬理作用に関する研究
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10J00614
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
難波 卓司 熊本大学, 大学院・生命科学研究部, 特別研究員(PD)
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Keywords | NSAIDs / DNAチップ / アルツハイマー / 多彩な薬理作用 / CHOP |
Research Abstract |
今年度は、NSAIDによって誘導されるHSP70と薬剤性肺線維症に関する研究が進んだので報告する。我々は、薬剤性肺線維症を起こす薬剤の中には、HSP70を減らすことにより肺線維症を起こしているものがあるかも知れないと考えた。そして、薬剤性肺線維症を起こす薬剤のHSP70発現に対する効果を検討し、ゲフィチニブにそのような作用があることを発見した。我々はまずこのゲフィチニブによるHSP70抑制機構を検討した。その結果、ゲフィチニブが特定のmicroRNA(mRNAに結合し、その安定性や翻訳効率を変化させるRNA)の発現を誘導し、HSP70の翻訳を抑制することを見出した。さらに我々は、動物にゲフィチニブを投与しても、肺のHSP70量が減少することを発見した。また、野生型のマウスにゲフィチニブとブレオマイシン(単独ではほとんど肺の線維化を起こさない少ない量)を同時に与えると激しい肺の線維化が起こるが、HSP70過剰発現マウスではほとんど起こらないことを発見した。さらに、普通のマウスでもテプレノンを投与して肺のHSP70を増やしておくと、ゲフィチニブとブレオマイシ(少量)を投与しても、肺の線維化がほとんど起こらないことを発見した。この研究結果はいくつかの点で重要であると考えている。一つはゲフィチニブがなぜ肺線維症を起こすかが分かった点である(ゲフィチニブが肺のHSP70を減らして肺を線維化している)。その結果、テプレノンを投与しHSP70を増やすことにより、ゲフィチニブによる肺線維症を予防できる可能性が示された点も重要である。テプレノンは既に26年間も臨床で使われており、そのヒトでの安全性は充分に理解されている。そこで本発見の速やかな臨床応用が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に示したように、NSAIDsの薬理作用に関して、抗アルツハイマー病作用の分子機構を解明するなど多くの成果をあげてきた。また今年度は、NSAIDによりHSP誘導作用と薬剤性肺線維症に関する研究を行い、治療法を示唆する成果をあげることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
特に変更の必要はない。
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