2010 Fiscal Year Annual Research Report
細菌感染によるオートファジーの細胞死制御機構の解析とその生理的役割
Project/Area Number |
10J00628
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
相川 知宏 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | A群レンサ球菌 / 細胞死 / オートファジー / ROS産生 |
Research Abstract |
当該年度においては、A群レンサ球菌感染に対する上皮細胞の細胞死誘導機構の解明を試みた.野生型のA群レンサ球菌の感染により,上皮細胞では細胞死が誘導されたが,細胞侵入能を欠失させた菌株の感染では細胞死の誘導は認められなかった.A群レンサ球菌は細胞侵入過程においてsmall GTPaseの1つであるRac1を活性化させた.活性化Rac1はNADPH oxidaseに結合することでこれを活性化させ,細胞内の活性酸素種(ROS)の増加とミトコンドリアの膜電位の低下を誘導した.細胞内のROS産生の増加により,p38 mitogen-activated prntein kinase(MAPK)が活性化され,最終的に細胞死が誘導されることが明らかとなった.また,当該年度においては,新規Nod-like receptor(NLR)であるNLRX1に注目し,A群レンサ球菌感染によるオートファジーとの関連を調査した. NLRX1を強発現させた上皮細胞ではオートファジーの誘導が促進された.オートファジーの誘導には,オートファゴソーム膜へのLC3と呼ばれる分子の移行が重要であり,これは活性酸素種(ROS)の増加に依存しておこる.NLRX1はミトコンドリアに局在しROS産生の増加に関与することが報告されているが,本研究においてもNLRX1強発現細胞ではミトコンドリアからのROS産生が増加していた.さらに,ROS産生を負に制御すると考えられるNF-Bの活性はNLRX1の強発現条件下では顕著に抑制された.以上より,NLRX1はNF-Bの活性を抑制することで細胞内のROS産生を増加させ,A群レンサ球菌感染に対するオートファジーの誘導を促進していることが明らかとなった.
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