2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10J00669
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中村 梨沙 九州大学, 生体防御医学研究所, 特別研究員DC2
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Keywords | 感染症 / 免疫 / T細胞 / インフルエンザウイルス / インターロイキン-15 |
Research Abstract |
高病原性インフルエンザウイルス感染において誘導される過剰な免疫応答が、致死的肺傷害を引き起こすことが知られている。しかし、インフルエンザウイルス感染後の致死的肺傷害形成のメカニズムは不明である。インターロイキン(IL)-15は、M細胞、NKT細胞、メモリーCD8+T細胞の分化、生存に重要であり、自然免疫・獲得免疫双方に関与するサイトカインである。そこで、本研究では、インフルエンザAウイルス感染による急性肺障害におけるIL-15の役割について検討している。本年度はまず、IL-15遺伝子欠損(KO)マウスの強毒性influenza A/FM/1/47感染マウスモデルを確立した。すると、野生型と比べIL-15KOマウスの肺のウイルス数に差はないにも関わらず肺組織傷害が減少し、顕著な生存率の延長がみられた。そこで、感染後のIL-15の標的細胞及び感染防御に重要な免疫細胞の同定を行った。その結果、IL-15KOマウスの肺における抗原特異的CD8T細胞が減少していた。そこで抗原特異的CD8T細胞の機能を検討したところ、IL-15KOマウスの抗原特異的CD8T細胞のインターフェロン(IFN)-γ産生及び細胞傷害活性が顕著に減少した。さらに、野生型マウス由来のCD8+T細胞をIL-15KOマウスに移入すると、生存率が減少した。さらに、CD8+T細胞を欠くβ2m KOマウス、野生型マウスに抗CD8モノクローナル抗体を投与したマウスにおいて、インフルエンザ感染後の生存率、肺組織傷害の改善が見られた。このことから、A/FM/1/47感染後の致死性は、ウイルス増殖によるものではなく、過剰な炎症に起因することを示唆する。また、IL-15依存性CD8T細胞が少なくともインフルエンザウイルス感染後の肺組織傷害の形成に関与することが示唆される。本研究は、IL-15が強毒性インフルエンザウイルス感染の致死的肺病態形成に関与することを示した最初の報告である。今後は、肺組織傷害形成におけるIL-15依存性CD8T細胞の質的・機能的解析を行うと共に、高病原性インフルエンザウイルス感染におけるIL-15の治療効果について検討予定である。
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