2010 Fiscal Year Annual Research Report
汽水湖漁業にみるコモンズの生成と流域環境ガバナンスへの射程
Project/Area Number |
10J00758
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Research Institution | Research Institute for Humanity and Nature |
Principal Investigator |
岩崎 慎平 総合地球環境学研究所, 研究部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 汽水湖 / コモンズ / 流域環境ガバナンス / コミュニティ主導型エコツーリズム / 漁民の森 / 正統性 / 資源管理 / 湖口管理 |
Research Abstract |
本研究は、汽水湖およびその集水域をフィールドに、人々の生活条件を規定する「自然資源(水産資源)」に着目し、汽水湖漁業の持続可能性をめぐる資源管理および流域環境ガバナンスのあり方を探ることを目的としている。本年度は、以下の3地域を主フィールドに社会水産調査を実施し、1.利害関係者間で水産資源の利用と管理をめぐり如何なる資源配分メカニズムが形成・展開され、2.漁業関係者と漁業以外の目的で同じ水域を利用する人々の間でどのような相互作用または意思決定メカニズムが働いているか、という2点に絞り調査研究を進めた。チリカ湖では、政府の開発事業に伴い漁業を営むことが難しくなった漁民らが、集落営のエコツーリズム事業を運用した事例について検討した。結果、湖内を利用する漁民との関係を維持しながら集客数は年々増加する傾向にあり、集めた収益は貧者救済・文化振興・インフラ整備など地域全体で様々な便益へ還元されていたことを明らかにした。クラブリ沿岸域では、汽水域さらには流域を一つの生態空間として捉えるべく、地域ごとに設立された資源利用者集団から構成される保全ネットワークの有用性を確認し、保全ネットワークの持続可能性を支える各集団代表のリーダーシップ、活動参加のインセンティブ付与と外部関係者を動員した運営体制の重要性を明らかにした。能取湖およびサロマ湖では、これまでの漁業史の変遷を紐解き、湖口が汽水湖漁業の持続可能性に対して決定的に重要な役割を果たすことを例証し、異質なアクターに配慮した湖口管理の必要性を明らかにした。サロマ湖では、流域が与える湖内への理化学的な影響を踏まえ「森と海は一つ」を合言葉に、関係漁協が湖内および上流で植樹活動を展開し、またホタテガイ貝殻の堆肥化・建材等の利用を通じた上流と下流の相互交流をはかるなど、物質循環に向けた取り組みの動向を整理した。
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Research Products
(7 results)