Research Abstract |
ある対象に反復して接触するだけでその好意度が高まる現象を単純接触効果と呼び,自らが接触したことを再認できない状況下(閾下接触)においても生起する。つまり,単なる反復接触という人間の基礎的な情報入力には"快"を生み出すという特徴がある。今年度はこの閾下単純接触効果を高次認知プロセスとして捉え,効果に影響を及ぼす要因を検討した。その際,Implicit Association Test (IAT)などの潜在指標を用いることでその潜在的影響に着目した。第一に,接触における"反復"と亀"変化"の観点から,効果を最大化させる"変化"の割合を検討した。オタクステレオタイプを題材に,ステレオタイプとの一致・不一致を操作することによって,成員の典型性の効果を検討した。具体的には,接触する10名の人物のうち,オタクに典型的な人物が含まれる割合を100%,70%,30%,0%として効果を比較した。その結果,単純接触効果が最も強かったのは70%条件であった。すなわち,接触の際に多数の典型例に少数の典型例が含まれることで,好意度が最大化することが明らかとなった。これは,人間が急激な変化よりも緩やかな変化を好むということを示唆する。第二の実績は,他者との相互作用による潜在的効果の顕在化である。先行研究から,閾下単純接触は必ずしも本人の自覚され得る効果として現れるとは限らず,多くは意識されない潜在的な次元に留まることが示されてきた。そこで,そのような閾下単純接触による潜在的効果が意識的な次元へと顕在化する過程について,集団成極化の観点から他者との相互作用の効果を検討した。その結果,同じ刺激対象に接触した二者間で一つの評価を導くという相互作用を媒介とすることで,顕在的な次元でも単純接触効果が確認された。一方で,異なる刺激対象に接触した二者間では,相互作用を経ても顕在化は認められなかった。したがって,顕在化のためには同じ対象に接触することによる感性の共有が重要だと考えられる。
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