2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10J00849
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大川 新之介 東京大学, 大学院・数理科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | Mori dream space / variety of Fano type / Variety of Calabi-Yau type / Cox ring |
Research Abstract |
本年度も、昨年度に引き続きMori dream space(以下MDS)という代数多様体のクラスの性質を解明することを目的とした研究を進めた。安定点つき曲線のmoduli spaceは(少なくとも種数0の場合には)MDSになると期待されており、このクラスについて研究をすることが重要であると考えたからである。 射影正規代数多様体XがFano型であるとは、X上の適当な有効Q因子Dが存在し、対(X,D)の特異点があまり悪くなく(kltと呼ばれるクラスに入る)、かつQ因子-(K_X+D)が豊富であることを言う。このクラスは極小モデル理論の観点からも重要であるが、先行研究によってそれらがMDSであることが知られていた。従って、Fano型多様体たちのMDSの中での位置づけを理解するのが大切であった。 本年度の研究で、MDSXがFano型になるための必要十分条件を与えることができた。具体的にはXから標準的に定まるCox環と呼ばれる環の特異点が一定のクラス(logteminal特異点)に入ることがその条件であることを証明した。更に証明の過程において大域的F正則型多様体にの概念は、正標数への還元を用いて定義される)がFano型になるか、というSchwede-Smithの問題にも部分的解答を与えた(2次元の場合には完全解決した)。更に、Fano型多様体を含むクラスであるCalabi-Yau型MDSについても同様の特徴付けを証明することができた。後者の研究では正標数還元を用いない異なる議論を用いており、最初の研究と合わせて多面的な見方ができた。尚、昨年度から行っていた、MDSからの全射を持つ多様体に関する研究についても目処がついた。以上の結果について合計3本のプレプリントを書き、論文を投稿した。また、そのうち2本の成果については各大学のセミナーや(国際)研究集会で講演を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では、代数幾何的補間問題、特に永田予想を解決するために、安定点つき写像のmoduli空間を精密に解析するということであった。足がかりとして安定点つき曲線のmoduliを調べたいのだが、そのために最も基本的な場合である種数0の場合を調べるという事であった。これがMori dream space(MDS)になるか?というHu-Keelの問題から出発してMDSの研究を中心的に行ってきたわけだが、MDSというクラスの性質を解明することに貢献する研究結果が幾つか出せていると考えるので、概ね順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
一般のMori dream spaceについてその幾何学を精密に調べるための統一的な手法がまだあまり整備されていないと考えられる。これについて、Morgan Brown氏の近年の研究結果が注目に値すると考えており、今後その応用を考えたい。 種数0の安定点つき曲線のmoduliがMori dream spaceになるか、という問題に関しては、現在も多くの詳細な研究が続けられているものの依然不明な点が多い。現在、このmoduli空間を双有理変換して調べやすくした多様体の研究を始めている。具体的には射影直線上の点配置のmoduli,そして点つき射影直線上の放物型ベクトル束のmoduliについて詳細な幾何の研究を始めたところである。これらの研究が、種数0の安定点つき曲線のmoduliの情報を与えることを期待している。
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