2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10J00855
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
畑山 要介 早稲田大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 倫理的消費 / 消費主義 / フェアトレード / ネオリベラリズム / 消費社会論 |
Research Abstract |
本研究の目的である現代社会における消費主義と倫理的消費の関係性を明らかにするために、本年度はフェアトレード消費に焦点を当て、消費者意識とその歴史的観点から分析を行った。その研究成果は大きく2つである。第1の成果は、フェアトレード消費においては、消費主義的意識と倫理的意識が相互排他的ではなく独特の共存関係を有していることが明らかになったということである。フェアトレード消費は倫理的志向に方向づけられている一方で、必ずしも消費社会への抵抗という志向にもとづいているわけではない。継続的な質的調査の結果、むしろ消費主義的な意識が倫理的な購買行動を支えていることが明らかになった。この共存関係を「倫理的消費の二重性」として理論化することを通じて、本研究全体の枠組みが構成された。第2の成果は、その共存関係は必ずしも伝統的なものではなく、歴史的には新しいものであるということが詳細な文献研究から明らかになったことである。まず、フェアトレード運動を、主流市場への対抗を志向する「理念主義」と主流市場への普及を志向する「現実主義」に区分することを試みた。さらに1980年代において、運動の「理念主義から現実主義への転換」が生じたことが明らかとなった。市場的な消費主義のオルタナティブとして機能していたフェアトレード消費が、その転換以降、逆説的にも消費主義それ自体と融合していく。この80年代の転換点の分析は、倫理的なものが市場に組み込まれていく過程の分析、そして今日の倫理的消費の自己意識のひとつの源流の分析として位置づけられうる。さらに、この転換点における消費主義と倫理的消費の媒介原理を「ネオリベラリズムとの共振」という観点から考察を進めた。その結果、「消費主義と倫理的消費の独特な共存関係が、ネオリベラリズムとの共振作用にもとづいている」という研究の次の段階へ向けた新たな分析枠組みを構成するにいたった。
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