2010 Fiscal Year Annual Research Report
メチル水銀によるタンパク質の翻訳後修飾で生じる神経疾患
Project/Area Number |
10J00932
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
外山 喬士 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | UCH-L1 / ユビキチン / メチル水銀 / パーキンソン病 / 不溶化 / MALDI-TOF/MS |
Research Abstract |
本研究は、メチル水銀(MeHg)によるUCH-L1の機能破綻及び不溶化による神経変性疾患への関与解明を目指したものである。本年度は、UCH-L1の精製タンパク質を作成し、in vitroでの実験を中心に行い下記の3つの成果を得た。 1.MeHgを精製UCH-L1タンパク質と反応させることでUCHL活性が消失した。 2.MALDI-TOF/MS解析の結果、UCH-L1の構造維持に重要であるCys220にMeHgが結合することが判明した。 3.MeHgを曝露したヒト神経芽細胞腫SH-SY5Y細胞やラットの脳内では、UCH-L1が不溶化していた。 以上の結果から、MeHgは細胞内でUCH-L1のCys220に結合することで、その活性を低下させると考えられた。これらの成果は、MeHgがパーキンソン病原因タンパク質に直接作用することを世界で初めて実証したものであり、MeHgに起因する神経変性疾患を理解する上で非常に重要である。さらに、イソチオシアネート系化合物により、MeHgの排泄を促進することを明らかにしたことから(T Toyama et al., Environmental Health Perspectives. 2011)、MeHgに起因するパーキンソン病を予防する糸口を示すことができる可能性があり、意義深い。そこで次年度では、UCH-L1活性におけるCys220の役割について変異タンパク質を作成し解析を進めるとともに、細胞中でのUCH-L1とMeHgの結合とユビキチン量の変動を明らかにする。さらに、上記の結果をまとめ当該国際誌への投稿を目指す。
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