2010 Fiscal Year Annual Research Report
自己エネルギー汎関数理論に基づく種々の低次元強相関系の数値的研究
Project/Area Number |
10J00958
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
関 和弘 千葉大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員DC1
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Keywords | 強相関電子系 / 銅酸化物高温超伝導体 / d-p模型 / Hubbard模型 / waterfall現象 / 変分クラスター近似 / 自己エネルギー / フェルミ面 |
Research Abstract |
本年度は、主に以下に示す2つの低次元強相関系の研究を行った。第1は、銅酸化物高温超伝導体におけるWaterfall現象に対する理論的研究である。Waterfall現象とは、銅酸化物高温超伝導体に対する角度分解光電子分光実験において、20eV程度のエネルギーの入射光子に対して波数(0,0)付近のスペクトルが消失するため、そのスペクトルが滝のように見える現象のことを指している。この現象の起源を解明するため、銅酸化物高温超伝導体の銅-酸素面をモデル化した2次元d-p模型に対して理論的考察及び数値的解析を行った。銅-酸素軌道に生じるZhang-Rice一重項状態の対称性と光電子分光における選択則、および入射光子のエネルギーに対する銅d軌道または酸素p軌道の散乱断面積の違いにより、この現象を説明し、実際にこれらを考慮した厳密対角化計算と変分クラスター近似(VCA)計算により一粒子励起スペクトルを計算することで、waterfall現象を再現した。第2は、2次元Hubbard模型の自己エネルギーとフェルミ面に関する研究である。2次元Hubbard模型のフェルミ面の形状は、理論的にも実験的にも興味が持たれている。本研究では数値計算を用いて自己エネルギーを注意深く考察することで、フェルミ面の形状を議論した。数値的厳密対角化法による計算の結果、自己エネルギーは波数に強く依存していることを示した。さらに有限サイズ計算の結果得た自己エネルギーを、簡単な関数を仮定してフィットしたものを無限系の自己エネルギーとし、これを用いてスペクトル関数を計算した。この結果、低ドープ域ではホールポケット型のフェルミ面を得た。さらにLuttingerの定理との整合性を議論し、ホールポケット型のフェルミ面がLuttingerの定理と矛盾しないことを説明した。
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Research Products
(4 results)