2011 Fiscal Year Annual Research Report
自己エネルギー汎関数理論に基づく種々の低次元強相関系の数値的研究
Project/Area Number |
10J00958
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
関 和弘 千葉大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員DC1
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Keywords | 自己エネルギー汎関数理論 / 変分クラスター近似 / BCS-BECクロスオーバー / 角度分解光電子分光 / 励起子絶縁体 |
Research Abstract |
自己エネルギー汎関数理論に基づく変分クラスター近似(VCA)計算を主な研究手段として用い、理論模型における励起子絶縁体のBCS-BECクロスオーバーに関する理論的研究を行った。励起子絶縁体はクーロン力が遮蔽されにくい半金属あるいは半導体で実現し得るものであり、近年注目される鉄系超伝導体においても半金属的なバンド分散が実現しているため、その理論的理解を進める意義は大きい。一方で、励起子は電荷を持たないため、励起子絶縁体状態が実際の物質で実現しているかどうかを確認することは難しい。本研究では、励起子絶縁体を再現する理論模型である拡張Falicov-Kimball模型に対し、初めてVCA計算を適用した研究を行った。特にこの模型に関して、短距離相関を厳密に取り入れた異常グリーン関数は先行研究では計算されたことがなく、励起子絶縁体におけるBCS-BECクロスオーバーの理解を進める上で重要な結果であった。また、この模型については平均場近似が有効になる場合があることが先行研究の結果から知られていたが、その理由を自己エネルギーの解析的性質の観点から明らかにした。さらに実験への示唆として、(角度分解)光電子分光実験により、価電子帯軌道と伝導帯軌道の混成の温度変化を観測することで、励起子絶縁体状態が現実の物質内で実現しているかどうかの判別が行える、という提案を行った。この研究成果は国内外の学術会議における講演及び論文として発表した。 またハニカム格子上で定義された半充填ハバード模型において、クーロン相互作用Uの関数としての半金属-絶縁体転移および反強磁性転移についての研究を行った。ハニカム格子上の電子状態は、グラフェンとの関連から、またフェルミエネルギーにおける特異な線形分散関係により大きな興味の対象となっている。VCA計算により、これらの相転移を調べた結果、クーロン相互作用の大きさが有限であれば一粒子ギャップが有限となり絶縁体となることや、反強磁性転移を起こすクーロン相互作用の大きさなどを調べた。この成果は国内学会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
二次元ハバード模型の金属絶縁体転移の研究に関して、目的とした厳密対角化計算を用いた考察を達成することができた。さらに励起子絶縁体状態におけるBCS-BECクロスオーバーの研究に関して、変分クラスター近似を用いてBCS-BECクロスオーバーを考察する目的を達成した上、その研究成果を国内学会、国際会議において発表し、論文として学術誌に出版することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
二次元ハバード模型の金属絶縁体転移の研究については、研究成果を学術誌に論文として発表することを視野に入れ、厳密対角化計算のみでなく変分クラスター近似計算を取り入れて研究を推進する。
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