2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10J01013
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
門脇 大 神戸大学, 人文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 近世文学 / 怪異小説 / 弁惑物 / 心学 |
Research Abstract |
「近世怪異小説における怪異否定の研究」について主に以下の四点の調査・発表を行った。 第一に、怪異の否定、暴露、説明を行う弁惑物に関する発表を行った。論文「弁惑物と狐憑き・狐持ち-『三才因縁弁疑』と『人狐物語』を中心として-」(「国文学研究ノート」46号、2010年9月)である。弁惑物の一つである『三才因縁弁疑』が『人狐物語』に引用されていることを指摘して、弁惑物の受容の様相を検討した。さらに医師の著した『人狐弁惑談』には弁惑物の一つである『鳥の啄』と同型の話が載ることを指摘して、弁惑物と医術の関連を検討した。 第二に、心学書に見られる怪異に関する言説を検討した。口頭発表「近世怪異と心学書-怪異の正体-」(2010年8月21日、第21回神戸大学文学部国語国文学会、神戸大学)である。先行研究では心学書に見られる怪異はほぼ検討されていない。心学書に散見する怪異に関する言説を具体的に検討した。そこには弁惑物と共通する論理があり、両者の影響関係を示した。このことで怪異小説と心学の関係性を示唆し、怪異理解の一側面を見出した。 第三に、近世怪異小説と心学の関連を具体的に検討した。口頭発表(国文学研究資料館、2010年11月28日)および論文「近世怪異小説と心学-『主従心得草』を例として-」(「第34回国際日本文学研究集会会議録」2011年3月)である。近世前期の怪異小説集と同型の話が心学書にもあることを指摘して、話の変遷を迫った。先行研究では同型の話が勧化本に受容されていることが指摘されており、検討もなされている。さらに勧化本から心学書に受容されていることを考え併せることで、近世怪異小説の展開を新たな視座から捉え直す可能性を示した。 第四に、弁惑物やその周辺領域の資料を収集した。書誌調査も行い、基礎データを蓄積した。これまでに記した成果に反映しており、来年度の発表でも活用する予定である。
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Research Products
(4 results)