2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10J01047
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
李 謙一 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 志賀毒素産生性大腸菌 / 糸状真菌 / 微生物間相互作用 / ストレス耐性 / 分子疫学 / 集団遺伝学 |
Research Abstract |
本研究の目的は、食品における糸状真菌(カビ)の食中毒細菌への生化学および物理的作用を明らかにし、カビが食中毒発生に寄与するリスクを評価することである。 カビによる生化学的作用は、チーズのスターターである、Penicillium camembertiまたはP.roquefortiの培養ろ液(pH4.7-5.0)中で志賀毒素産生性大腸菌(STEC)を培養して評価した。この結果、カビ培養ろ液は25℃ではSTECの誘導期を有意に短縮させ、10℃ではSTECの死滅を抑制する事が明らかとなった。さらに、食品中での上記のカビによる増殖促進/死滅抑制作用を観察するために、酸性化した無菌牛乳中でP.camemebertiとSTECを共培養した。この結果、STECは単独培養時には死滅したが、P.camembertiとの共培養時には、10^8 CFU/mlまで増殖した。これらの結果から、チーズのスターターカビは酸性条件下において、STECの増殖促進および死滅抑制効果を持つことが明らかとなった。今後、当作用の原因物質を質量分析計などを用いて分析する。また、カビ菌糸の物理的作用についても検討する予定である。 上記の培養実験と並行して、カビの存在がSTECの起こす食中毒に及ぼす影響を評価するための基礎的研究として、144株のSTECを志賀毒素遺伝子(stx)型別およびLineage specific polymorphism assay 6(LSPA6)で型別し、結果を集団遺伝学的手法を用いて解析した。この結果、ウシからの分離株は食中毒患者からの分離株よりも遺伝的に多様であり、stx1,stx2同時保有株やLSPA6 lineage Iの株など一部の遺伝子型の株がヒトに病気を起こしやすい傾向が明らかとなった。今後、これらの遺伝子型がカビとの相互作用の中でどのような影響を及ぼすのか、統計的手法を用いて解析する予定である。
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Research Products
(2 results)