2011 Fiscal Year Annual Research Report
溶融高分子の内部において分子鎖が形成するからみ合いの構造のダイナミクス解析
Project/Area Number |
10J01270
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
奥田 覚 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 高分子ダイナミクス / 界面相互作用 / からみ合い構造 / 粗視化モデル / レオロジー / 数値シミュレーション / 分子間相互作用 / プリミティブチェーンネットワーク |
Research Abstract |
からみ合い構造を有する高分子溶融体のレオロジー挙動は、内部のモノマー間相互作用に依存して変化する。その機構を理解するためには、このモノマー間相互作用をからみ合い構造スケールから扱う必要がある.そこで本年度はまず、1)高分子内部のモノマー間相互作用をからみ合い構造のスケールから扱うため、セグメント間相互作用の新しい粗視化モデルを構築した。次に、2)この数理モデルを導入したプリミティブチェーンネットワーク(PCN)シミュレーションによって、バルク条件における一成分系高分子のセグメント間距離分布を解析した。その結果は、ガウス型ソフトコアポテンシャルモデルによる粗視化シミュレーションの結果と同じ傾向を示し、本数理モデルの妥当性が示唆された。さらに、3)モノマー間相互作用の強度をパラメータとして、からみ合い構造、および、マクロなレオロジー挙動を解析した。その結果、セグメント間距離分布、および、短時間スケールにおける緩和弾性率が、モノマー間相互作用の強度に依存した。これにより、モノマー間相互作用が、からみ合い構造や、短時間スケールにおけるマクロなレオロジー挙動に影響することが示唆された。本モデルは、ブロックコポリマー、ブレンドポリマー等の混合系への適用や、壁面-モノマー間の相互作用を有する壁面系への拡張が期待される。最後に、3)セグメント間相互作用モデルのフレームワークの応用として生体組織の形態形成過程の力学モデルの構築に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度では、からみ合い高分子におけるセグメント間相互作用を数理モデル化し、バルク条件下における一成分系高分子のレオロジーの解析を行った。その結果、短距離スケールにおけるセグメント間距離分布が改善し、本モデルの妥当性が示唆された。また、モノマー間相互作用がからみ合い構造や短時間スケールにおけるマクロなレオロジー挙動に影響を及ぼすことが明らかになった。この開発した数理モデルは、固液界面を含む系や、ブロックコポリマー、ブレンドポリマー等の混合系のレオロジーを解析するための基礎となる。以上より、本研究は当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究により、溶融高分子の内部におけるモノマー間の相互作用が、からみ合い構造を通して、マクロなレオロジーに及ぼす影響を明らかにすることができた。今後、さらなる展開として、開発した数理モデルのフレームワークを応用し、新たに、生体組織の形態形成過程の力学モデルの構築を検討している。細胞間相互作用に基づく生体組織の形態形成過程は,セグメント間相互作用に基づく高分子レオロジーと同様に、階層的な幅広い時間・空間スケールにおける多体ダイナミクスであり、からみ合い構造の解析手法の応用によって、その機構解明が期待される。
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