2010 Fiscal Year Annual Research Report
東北地方縄文時代中期―後期土器編年における標式資料・基準資料の基礎的研究
Project/Area Number |
10J01384
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
安達 香織 慶應義塾大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 縄文土器 / 型式編年 / 最花式 / 製作技法 / 製作工程 |
Research Abstract |
本研究は、東北地方縄文時代中期から後期にかけての土器型式編年の基盤整備を目的とする。中でも東北地方北部中期後葉に位置けられる「最花(さいばな)式」は、標式資料が未公表であり続けているため、1950年の名称初出以来、内容が不分明である。本年度は特に、この「最花式」の再検討のために、既報告の青森県むつ市最花貝塚遺跡A地点1964年調査出土I類土器(慶應義塾大学所蔵)と外ヶ浜町中の平遺跡出土第III群土器(青森県埋蔵文化財センター所蔵)の二者を中心に分析を行ない、主に以下の3つの結果を得た。(1)二者は製作・形態・装飾等にそれぞれ固有の特徴をもち、それぞれ纏まって出土していることから、別型式の標準と考えられる。(2)時期や地域の隣接する他型式との関係を考慮すると、特にその文様が個別の変遷過程を経ていることから、二者は系統の異なる並行期の別型式と考えられる。(3)二者と一致する特徴をもつ土器の分布域も異なっていることから、二者は並行期の別型式と考えられる。これらの分析結果から、二者を基準にして、それぞれ最花A式と中の平III式とを設定できる。従来、二者は「最花式」に一括され、その文様の異なりが時期差として扱われることが多かった。しかし本研究では、この(1)~(3)等の分析結果から、今後、最花A式と中の平III式とを地域差をもつものとして編年体系に左右に分けて位置づけるほうが合理的であると結論づける。以上の成果は、原資料の形態装飾だけでなく製作技法や製作工程等の多角的な比較検討による型式学的研究方法で編年体系を整備した点が意義深い。その他、中期最末-後期初頭の希少な最花貝塚遺跡B地点出土土器(慶應義塾大学所蔵)の一部が、新潟県を分布の中心とする三十稲場式土器の最北の出土事例と考えられることを把握したため、その今後の分析・検討・報告の重要性が増した。
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