2011 Fiscal Year Annual Research Report
環境適応型ハイブリッドべん毛モーターのトルク特性と固定子の結晶構造解析
Project/Area Number |
10J01439
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
寺原 直矢 大阪大学, 生命機能研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | べん毛モーター / 固定子 / X線結晶構造解析 / 1分子計測 / Bacillus属細菌 |
Research Abstract |
本研究では、好アルカリ性細菌Bacillus clausiiの環境適応型ハイブリッドべん毛モーター固定子MotAB複合体の結晶化およびX線構造解析を行い、イオシ選択性における原子レベルでのメカニズムの解明とべん毛モーターの回転機構の解明を目的とした。さらに、共役イオンが変化する環境適応型べん毛モーターのビーズアッセイ法による1分子回転計測を行うことで、エネルギー変換における新たな知見を得ることを目指している。 結晶構造解析においては、B.clausiiのMotAB複合体とともに好アルカリ性Bacillus属細菌で共通の固定子MotPS複合体の両方を結晶構造解析のターゲットタンパク質とし、まず大腸菌を用いた高発現系を確立した。MotPS複合体に関しては、20種類の界面活性剤を用いて可溶化効率を検討した。その中でよく構造を保持したまま可溶化できる界面活性剤が5種類あった。これらの界面活性剤を用いて精製を試みたところ、よく単分散した高純度の精製サンプルの調製に成功した。現在、これらのサンプルを用いて結晶化を試みている。またB.clausiiのMotAB複合体に関しては複合体での発現が困難であるため、引き続き発現系の構築を行っていると同時に、イオン選択性に特に重要なMotBの膜貫通ドメインを削ったフラグメントの結晶構造解析も行っている。 一方、ビーズアッセイ法においては、これまでB.subtilisのべん毛構成タンパク質に対する抗体を用いてビーズ接着の高効率化を試みていたが、最近、べん毛構成タンパク質を改変することで、抗体なしで効率的にべん毛フィラメントにビーズを接着させることに成功した。現在、B.subtilisの持つ固定子MotABおよびMotPSをそれぞれ発現させた株の回転計測を行っている。これらの固定子が出力するトルクを指標に、今後、B.clausiiのMotABのイオン選択性とエネルギー変換機構の解明に挑戦していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
結晶化に関しては、MotPS複合体の精製法を確立し、現在、結晶化スクリーニングまで至っている。MotAB複合体は、大量発現系がまだ確立できていないが、MotBのフラグメントの精製法を確立し、結晶が得られており、現在解析中である。一方、回転計測に関しては、枯草菌を使った計測系が確立できたので、現在測定中である。以上の観点から、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
MotPS複合体に関しては、結晶化スクリーニングを行っているが、得られた結晶はすべて界面活性剤由来のもので、タンパク結晶をまだ得られていない。今後、他の界面活性剤を検討する予定である。また、MotP、MotSそれぞれ単独の結晶化も試みる予定である。MotAB複合体に関しては、大量発現系がまだ確立できていないため、今後、他の細菌由来のMotABも含めて、大量発現系と精製法の確立を行う予定である。また、MotABのプロトンチャネンル活性の影響で大量発現が困難であると考えられるため、チャネル活性を失った変異体を作製し、大量発現が可能か試みる予定である。
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Research Products
(3 results)