2010 Fiscal Year Annual Research Report
内集団ひいき行動の適応的基盤-理論的研究と実証的研究を用いた検討-
Project/Area Number |
10J01455
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小野田 竜一 北海道大学, 大学院・文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 利他行動 / 社会的交換 / 一般交換 / 間接的互恵性 / 内集団ひいき / 集団選択 / 内集団バイアス |
Research Abstract |
本研究は内集団ひいき行動の適応的基盤を探ることを目的とする。内集団ひいき行動とは自分とは異なる集団(外集団)に属するメンバーよりも、自分と同じ集団(内集団)に属するメンバーに対してより利他的に振舞うことをさす。本研究では、なぜ人々が内集団ひいき行動を行うのかという問いに対する明確な解答を得ることを最終目的としている。報告者はこの問題に、なぜ内集団ひいき行動を行うことが高い利益をもたらすのかという適応論的視点からアプローチする。報告者と同様のアプローチを用いた先行研究(e.g., Bowles and Choi, 2004 ; Garcia and Bergh, 2010)では外集団との競争状況を想定しているが、本研究ではその想定をせずに内集団ひいき行動の適応的基盤を探ることを試みる。 当該年度は、内集団ひいき行動に利益をもたらすメカニズムを理解するため、進化シミュレーションを行った。進化シミュレーションでは想定された状況下でどのような行動が高い利益を得ることができるのか、すなわち特定の行動が適応的となるのかを演繹的に導き出すことができる。ここでは、恣意的な集団ラベルを設けた状態において、各個人が他者の評判(過去の行動履歴)に基づいて利他行動を行う進化シミュレーションを行なった。その結果、内集団ひいき行動は適応的となったが、そのためには、内集団ひいき行動をとる者が"内集団ひいきを行っていない個人を排除すること"と"内集団ひいきをしていない者を許容する個人を排除すること"を行っていなければならないという厳しい条件が必要であることが示された。 本研究の結果は、先の先行研究とは想定している状況が異なり、外集団との競争状況を想定せずとも、行動履歴による他者からの評判がつくことを想定すれば内集団ひいき行動が自発的に生起しうる可能性を示唆している。このような理論的インプリケーションを本研究はもっているといえる。当該年度では、分野に問わない国内・国際学会に参加することで、その想定状況の相違に対する意見や厳しい適応要件の解釈に対する意見を聞いた。
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