2010 Fiscal Year Annual Research Report
電磁誘起透明化による有機分子集合体-量子光結合系の量子ダイナミクスの理論研究
Project/Area Number |
10J01539
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
南 拓也 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 電磁誘起透明化 / 分子集合体 / 励起状態 / 量子マスター方程式 / 光学吸収 |
Research Abstract |
本年度は、分子集団における電磁誘起透明化(以下、EIT)の適用可能性を検討するため、遷移双極子から構成される分子集合体モデルの励起状態ダイナミクス及び動的分極率を量子マスター方程式により解析した。従来の研究では単純な三準位モデルに基づくEITが検討されてきたが、分子集合体や一般の分子系では多彩な相互作用により多数の励起状態が光学遷移に関係するため、入射光に対して複数の励起状態が干渉する効果を検討する必要がある。分子間相互作用の効果を解明するために、三準位モノマーから構成されるダイマーモデルを考慮し、モノマーのEITとの比較、及びモノマー間の配向や分子間距離の違いについて比較した。モノマー間の配向が異なるモデルとして、双極子が平行に並んだH型モデルと、垂直に並んだL型モデルの二種類を考慮した。H型モデルでは光学吸収のピーク強度が増大しピーク位置が高周波数側へシフトするものの、制御光を照射する事で吸収強度の著しい減少が確認され、モノマーの場合と同様EITを確認する事ができた。L型ダイマーモデルでは通常、ピーク強度の減少およびピークの分裂が見られるが、制御光の振動数を調節する事により片側の吸収ピークのみ吸収強度を減少できる事が判明した。以上の結果から、本研究は分子集合体におけるEITの適用可能性を示しただけでなく、分子集合体のもつ多数の吸収ピークを利用して制御光の振動数を調節する事で透過光の振動数を自在に制御する可能性を示唆しており、新たな光スイッチデバイスへの展開が期待される。ICCMSE2010において本研究の成果を発表した。今後、EITが分子集合体の光学応答特性に及ぼす影響について知見を深めるために、ダイマーモデルに基づき制御光印可による吸収強度の減少機構の解析、及びその非線形光学応答特性に注目して研究を進める予定である。
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