Research Abstract |
研究の成果 平成23年度に実施した研究は以下の通りである. 1.非線形光学の分野に現れる非線形連立Schrodinger方程式系の解析. 2.完全非線形楕円型作用素に対する固有値,固有関数の研究. まず,1の研究の具体的な内容,意義等について説明する.得られた成果としては,屈折率を支配する方程式の拡散係数が0に収束させたとき,基底状態解とそのエネルギーの挙動を解明した.この系は本来屈折率が非局所的に影響を及ぼしている.しかし,拡散係数が0に収束するとその効果は局所的なものになると考えられる.このことを厳密な数学解析の手法を用いて証明を行った. この方程式系に関する結果としてはコンピューターを用いた数値解析の結果しかないように思われる.したがって,本年度に得られた厳密な数学解析の結果は意義を持っていると思われる. 次に2の研究について述べる.得られた結果は,2次元以上の場合,球対称性と比較的弱い可積分条件を課した下で固有値,固有関数の列の存在,その単純性,完全性を示した.言い換えれば,球対称な固有関数を全て見つけ,全ての固有値の重複度は1であることも示した. この結果の意義等について説明する.まず,上の結果は微分ゲームの分野等において現れるHamilton-Bellman-Jacobi作用素等を含んでおり,大変広範な作用素に適用できる.さらに,重要に思われることは,作用素に対する可積分性の条件である.この可積分性の条件は,現在の完全非線形楕円型方程式の解の存在理論の視点から見ても,最良に近いものである.したがって,この部分だけを見ても重要性があるように思われる.また,これらの結果が,非線形項がある方程式系の解析に役立つことも期待できるので,今回の結果は意義があるものだと思われる.
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