2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10J01777
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
羅 翠恂 早稲田大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 中国 / 唐代 / 宋代 / 仏教美術 / 摩崖石刻 / 四川 / 千手観音 / 大悲変相図 |
Research Abstract |
本年度は、(1)四川省に現存する唐~宋代の千手観音像のうち、重要作例や未調査作例を現地調査し、関連経典の内容と照らし合わせながら四川地域の千手観音像の大半を占める「大悲変相図」の場面同定を行う手掛りを得ること、(2)これまでに実施した調査と(1)の調査結果を踏まえて浄士往生信仰と関連したモチーフを含む作例の分布状況を確認すること、(3)(1)・(2)の結果を踏まえて唐宋代四川地域における千手観音図像の展開について総合的な見解を構築すること、を主眼として研究を進めた。 現地調査は四川省の庵堂寺摩崖石刻造像、聖水寺摩崖造像、重龍山摩崖石刻造像、白岩寺摩崖石刻造像、看灯山摩崖造像、飛仙閣摩崖造像にて20件、河南省の龍門石窟にて2件、計20件の唐代作例を対象として、2011年3月11日から31日にかけて実施した(地理的には四川と隔たる龍門の作例は、中国における現存最古の千手観音像である可能性が指摘されており、四川省内で最古とされる盛唐期の作例との比較を行う上で重要と判断したため調査対象に含めた)。 調査の結果、次の成果が得られた。まず、天復七年(907)銘の付された庵堂寺像が、同時期に制作された複数の記年作例と図像上の共通点も多く、晩唐期の図像的特徴を考える上での基準作例となり得ることが確認できた。また、庵堂寺、白岩寺、看灯山の作例を調査したことで、現在四川省に残る唐宋代の作例の殆どを実見し終え、同地域における図像の展開を考える上での地盤を整えることができた。その結果個々の作例を相対化することが可能となり、晩唐期の図像が中唐以前の図像の簡略形であり、唐宋代四川地域の大悲変相図の場面同定を行う上では、中唐以前の作例が重要となること、また浄土往生信仰と結びつくモチーフが特に成都盆地西部の丹稜県、〓峡市に残る中唐頃の作例に集中することなどを確認することができた。
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