2010 Fiscal Year Annual Research Report
「民意」をめぐる動態的研究 ―住民投票・地方選挙の分析をもとに―
Project/Area Number |
10J01792
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
塩沢 健一 中央大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 住民投票 / 地方政治 / 投票行動 / 市町村合併 / ハコモノ行政 / 長野県 / 政治学 |
Research Abstract |
本年度の研究においては、平成22年11月14日に長野県佐久市で実施された、佐久市総合文化会館建設の賛否を問う住民投票について郵送調査を行い、市の有権者3,000名を対象として実施した結果、1,544件の有効回答を得た。 「平成の大合併」による市域の拡大の帰結として、市町村レベルにおける「民意」の形は自ずと変わってくる。住民投票の活用が全国各地で検討される中、今後は以前と比べて、より自治体規模の大きな市町村で住民投票が実施されることが想定される。佐久市の住民投票が「平成の大合併」で誕生した新自治体で行われた初めての事例だった点に着目し、郵送調査では、合併前の旧佐久市および旧町村部でサンプルを二分して、調査票を送付した。 投票テーマが旧佐久市の時代からの長年の課題だったこともあり、旧佐久市と旧町村部とで、有権者の賛否や意識に一定の差異のあることが明らかとなった。実際の住民投票においては、佐久市全体で反対票が約7割を占めたが、旧町村部では反対票を投じた人の割合はさらに多く、また旧佐久市内では、やはり反対者の割合が賛成者より多いものの、旧町村部と比較すると、旧佐久市における賛成者の割合は相対的に高かった。一方で、両地域の比較において、投票参加の割合には目立った際は見られなかった。これらのことから、「平成の大合併」後の住民投票においては、より多様な形の「民意」を賛否2択で問うことに一定の限界があると言えるものの、市の重要課題を住民投票にかけることで、新市における一体感の醸成という点に関して、住民投票がある程度まで寄与していると捉えることもできる。
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