2011 Fiscal Year Annual Research Report
バクテリアからヒトまで高度に保存されたNif3ファミリー蛋白質の構造機能解析
Project/Area Number |
10J01804
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
友池 史明 大阪大学, 生命機能研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | Nif3 / 機能未知蛋白質 / 相互作用解析 / 立体構造解析 / MD計算 / 高度好熱菌 |
Research Abstract |
Nif3ファミリーはバクテリアからヒトまで広く保存されている蛋白質であるが、その機能はまだ明らかになっていない。本研究では、Thermus thermophilus HB8がもつこのファミリー蛋白質、TTHA1606の解析を行い、Nif3ファミリーの機能解明を目指している。TTHA1606が関わる生命現象を明らかにするために、タグ付きのTTHA1606を用いてプルダウンアッセイを行い、相互作用因子の探索を行ったが、今のところ強く相互作用する蛋白質は見つかっていない。一方、TTHA1606の同一オペロン上にヌクレオチド代謝に関わる遺伝子がコードされているため、ヌクレオチド代謝酵素の活性を調べたところ、T.thermophilus HB8におけるプリンヌクレオシド・ホスホリラーゼの基質特異性が他の生物におけるホモログのものと異なることが明らかになった。まだ、ヌクレオチド代謝経路におけるTTHA1606の役割は不明であるが、T.thermophilus HB8のヌクレオチド代謝経路全体が明らかになりつつあるので、この結果は、TTHA1606の生理学的機能の解明につながると期待される。TTHA1606の構造については、これまでの研究により結晶構造が明らかにされており、結晶中では六量体のリング状構造をとっていることが明らかになっている。また、去年度に行った電子顕微鏡観察により、溶液中でもTTHA1606がリング状構造をとっていることが明らかになった。しかし、溶液中での構造変化をみるためには電子顕微鏡では分解能が不十分である。そこで、溶液中の振る舞いをシミュレーションする分子動力学計算を行うための基盤を整えた。まだ十分な時間の計算はできていないが、その準備段階である、構造へのプロトン付加、計算空間の構築、電荷の中和、構造の最適化は完了している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
相互作用因子を同定した上で生理学的機能を推定し、それに基づいて増殖曲線や遺伝子発現の変化を調べる予定であったが、今のところ確実な相互作用因子は見つかっていない。そのため、生理学的機能の解析が遅れている。しかし、溶液中での蛋白質分子の変化をシミュレーションする分子動力学計算の基盤が確立されたため、分子機能の解明は大きく前進すると期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞内機能の解明のため、引き続き相互作用因子の探索を行う。現在まで相互作用蛋白質が見つからなかったのは、用いたタグ付きのTTHA1606の量が少なかったため、十分な相互作用因子を回収できなかったことが原因と考えられる。次年度は、タグ付きのTTHA1606の量を増やして探索を行う予定である。なお、タグ付きのTTHA1606の大量発現には成功している。また、分子機能の解明として、まず、分子動力学計算により、TTHA1606の六量体が水溶液中でどのような振る舞いをするかをシミュレーションする。これにより、結晶構造解析や電子顕微鏡観察ではわからなかった水溶液中における構造変化や安定性の知見が得られることが期待される。
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