2010 Fiscal Year Annual Research Report
葉内ベタシアニンがアマランサスにおけるC4光合成の光阻害緩和に果たす役割の解明
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10J01856
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中島 大賢 九州大学, 大学院・農学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | アマランサス / 環境ストレス / クロロフィル蛍光 / C4光合成 / 光阻害 / ベタシアニン / レーザー誘起蛍光 |
Research Abstract |
光阻害は諸環境ストレス下で植物の生産性を著しく低下させることが報告されており,その機構解明は環境ストレス下で作物の生産性を維持するとで重要である.本研究ではアマランサスの葉に蓄積する赤色色素ベタシアニンが光阻害緩和に果たす役割を調査し,不良環境下における光合成能維持に対する機能の解明を試みた. 本年度は(1)アマランサスを用いたC_4植物葉内における光阻害の評価法,並びに(2)葉内ベタシアニンの蓄積が長期乾燥下のアマランサスにおける光阻害および光合成特性に及ぼす影響について検討した. (1)では,光阻害処理を施したアマランサス葉の横断切片を作成し,顕微鏡下で葉肉および維管束鞘細胞にレーザーを照射することで得られるクロロフィル(Ch1)蛍光強度の誘導過程から,それぞれの細胞における光阻害程度の評価を試みた.その結果,Strasserらにより提唱されたOJIP解析による光阻害関連パラメータはいずれの細胞においても光阻害処理により変化した.また,光阻害程度には柵状葉肉から海綿状葉肉細胞にかけて勾配があることが示唆された.これらの結果から,本手法によりCh1蛍光を細胞レベルで測定することが可能となりC_4植物葉内における光阻害特性の評価ができることが明らかとなった.(2)では,ベタシアニンを蓄積する赤葉系統と蓄積しない青葉系統のアマランサスに対して,軽度な乾燥ストレスを15日間与え,その後再潅水処理を5日間施し,その間の光阻害ならびに光合成特性を検討した.その結果,日中の光阻害程度は赤葉系統で低い傾向を示し,葉内ベタシアニンの光阻害緩和作用が示唆された.また,乾燥処理中の光合成速度は気孔閉鎖により両系統で同等に低下したが,再潅水処理後は赤葉系統で対照区の値まで回復したのに対し,青葉系統では約70%の回復にとどまった.このことから,葉内ベタシアニンの光阻害緩和作用により光合成機能の低下が抑制され,再潅水後の光合成能が維持されたものと考えられた.
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Research Products
(4 results)