Research Abstract |
有機テルル化合物をcontrol agentとして用いるTERPを,克服課題とされてきた乳化重合系へ適用し,分子量分布の狭い高分子微粒子の合成に成功した(無乳化剤TERP乳化重合)。しかしながら,60℃において得られた粒子は単分散ではなく,サブミクロンサイズとナノサイズの粒子が含まれるバイモーダルな分布を有していた。このサブミクロンサイズの粒子の発生は,開始剤由来のオリゴマーに起因する均相核形成によるのではないかと考え,重合温度を変化させることによる開始剤の分解速度が粒子形成に与える影響について検討を行った。さらにその結果から,無乳化剤TERP乳化重合における粒子形成機構の解明を試みた。 得られた各粒子のTEM観察より,70℃ではサブミクロンサイズの粒子,50℃ではナノサイズの粒子が主に得られ,60℃においてはそれらが混在した二峰性の分布が得られたことから,開始剤の分解が遅い低温ほどサブミクロンサイズの粒子の割合が少ないことがわかった。次に,このサブミクロンサイズ及びナノサイズの粒子間の重合制御の違いについて明らかにするために,得られた粒子を遠心分離し,GPCにより分子量分布を測定した。その結果,ナノサイズの粒子に比べてサブミクロンサイズの粒子では分子量分布が広く重合制御が悪いことがわかった。以上の結果から,ナノサイズの粒子はcontrol agentが適切に導入される自己組織化核形成により生じ,サブミクロンサイズの粒子は開始剤からの均相核形成により生じたと考えられた。この考え方を確認するため,粒子形成段階である重合初期のみを重合温度50℃で重合し,14時間後(重合率:約25%)60℃昇温したところ,重合を通して50℃で重合を行ったものと同様の粒子径分布及び分子量分布を有した粒子が得られた。以上のことから,無乳化剤TFRP乳化重合には上記二つの粒子形成機構が存在し,この粒子形成段階が重合制御に大きな影響を与えることを明らかにした。
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