2011 Fiscal Year Annual Research Report
波長可変レーザー光照射による単層カーボンナノチューブのカイラリティ分離
Project/Area Number |
10J02032
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
加藤 雄一 九州大学, 工学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ナノテクノロジー / カーボンナノチューブ / カイラリティ分離 |
Research Abstract |
DNAで可溶化した単層カーボンナノチューブ(ナノチューブ)をコール酸ナトリウム水溶液に分散させた。この溶液に、レーザー光を照射し、カイラリティ選択的な可溶化剤の置換を試みた。可溶化剤置換はフォトルミネッセンスおよび吸収スペクトルのピーク波長のシフトの観測によって行った。DNAとコール酸ナトリウムの濃度設定、さらに照射するレーザー光の波長・強度・照酎時間の最適化を行った。しかしながら、レーザー光照射によるDNAからコール酸ナトリウムへの可溶化剤置換は見られなかった。そこでナノチューブ可溶化剤の置換挙動について調査した。ナノチューブ可溶化剤置換そのものについて、このような研究はこれまでなされていない。DMとコール酸ナトリウムの溶液濃度と可溶化剤の置換率、温度の関係を調べた。DNAは長さの異なるオリゴー本鎖DNA(シトシン塩基)を用いた。可溶化剤の置換率は吸収スペクトルから求めた。そして反応の平衡定数、熱力学パラメータを、カイラリティの異なるナノチューブそれぞれについて実験的に決定した。特にDNAの長さの影響について興味深いことが分かった。長さによって、加熱によりコール酸ナトリウムからDNAへの置換が進行するか、逆のDNAからコール酸ナトリウムへの置換が進行するかが異なることが分かった。この成果の意義および重要性は、レーザー光照射による置換についての、濃度条件や温度条件などの基本的な実験条件を求めたことにある。またナノチューブ可溶化剤置換反応、およびナノチューブと可溶化剤の相互作用解明への道を拓いたことを意味する重要な成果である。これらの成果は論文としてChemistry Letters誌において発表した。また韓国釜山で開催された高分子九州西部-釜山慶州ジョイントシンポジウムなど国内外の国際学会および国内学会で発表を行った。またこの成果に関する発表は上記国際学会においてposter awardを受賞した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ナノチューブ可溶化剤の置換挙動について定量的な値をもって明らかにするという成果をあげている。またレーザー光照射による置換についての、濃度条件や温度条件などの基本的な実験条件を求めることに成功している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの成果により、加熱による可溶化剤置換の進行する方向を定めることができた。この結果を踏まえてレーザー光の波長・強度・照射時間を最適化し、波長可変レーザー光照射による単層カーボンナノチューブのカイラリティ分離を達成する。
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