2010 Fiscal Year Annual Research Report
赤外線天文衛星「あかり」による原始惑星系円盤の観測的研究
Project/Area Number |
10J02063
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Research Institution | Japan Aerospace Exploration Agency |
Principal Investigator |
瀧田 怜 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 原始惑星系円盤 / 星形成 / 赤外線天文学 / あかり衛星 |
Research Abstract |
Τタウリ型星周りの原始惑星系円盤は、惑星形成過程の出発点に位置する天体であり、その物理的性質を求めることは重要な課題である。そこで本研究では、「あかり」衛星による原始惑星系円盤の観測から円盤の物理的性質を求める。 本年度は、まず詳細観測を行ったカメレオン座領域のデータ処理を行った。カメレオン座領域の観測は、分子雲コアから主系列星までの星・惑星系形成過程の全ての段階のサンプルを網羅することで、星の進化を理解する計画である。一方で、詳細観測で得られたデータを処理するツールは自分たちで用意する必要があり、その作成を行ってきた。現在は得られたデータについて天体の位置や輻射強度の較正を進めている。 同時に、全天サーベイを用いたおうし座領域のΤタウリ型星の研究・追観測を行った。ここで我々が着目したのは分子雲から孤立したΤタウリ型星である。従来は星形成の母体である分子雲の近くしか着目されていなかったが、「あかり」の全天サーベイを使うことでその他の領域も探査ができる。我々は前年度、既知のΤタウリ型星が数多く存在するおうし座領域を調べることで、Τタウリ型星の探査方法を確立した(Takita et al, 2010a)。この手法により、おうし座方向の広い領域で27個の新しいΤタウリ型星の候補天体を発見した。この候補天体が本当にΤタウリ型星であるのか、さらにはこの手法の有用性を確かめるために、米国Kitt Peak天文台の2m望遠鏡を用いて追観測を行った。この結果23天体が実際にΤタウリ型星であり、探査方法の有用性が示された。今後はこの手法を用いて全天について調査を進める予定である。またこの結果から、多くのΤタウリ型星が分子雲から孤立して存在することも明らかになった。星形成は分子雲で起きるため、孤立したΤタウリ型の成因は、形成された星が分子雲から移動したと考えられていた。しかし各天体の固有運動(天球面上の運動)を調べた結果は、小さな分子雲で星が形成され元の分子雲はすでに消失したと考えられる。これは、星形成は大きな分子雲だけではなく広範囲に広がった小さな分子雲でも起きていることを表しており、星形成の理解のためにはより広い領域について調べる必要がある。本成果については申請者の学位論文としてまとめられた。
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