2010 Fiscal Year Annual Research Report
魔術・魔術師伝承の伝播における、ユダヤ教と古代中東・地中海世界の影響関係史
Project/Area Number |
10J02072
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大澤 耕史 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 魔術師伝承 / ミドラッシュ / 魔術 |
Research Abstract |
今年度は、聖書における魔術的単語の調査から始め、それらの語の聖書における使用法・頻度を調べた。続いて、それらの語のバビロニア・タルムードにおける使用法・頻度を調査し、聖書におけるそれからの歴史的変遷とその背景についての考察を行った。その成果が日本旧約学会における研究発表である。日本の聖書学において、これまでにない視点を持った面白い研究であるとの評価を受けた。続いて、その時点までのユダヤ教文献における魔術師伝承の収集結果を世界の研究者の前で発表した。この発表の直後から、イスラエル国ヘブライ大学にて研究調査を開始。各種一次・二次文献の精読、研究者との打ち合わせに必須であるヘブライ語の訓練を受けながら、まずは二次文献の収集に着手した。それと並行して、現地研究者との打ち合わせも開始した。1月にはヘブライ語の運用能力について、ヘブライ大学より最上位資格の「プトール(免除)」を授与された。2月にはこれまでの研究結果をヨーロッパの学術誌へ投稿し、現在もその校正中である。3月にはユダヤ教の魔術研究の第一人者であるGideon Bohak教授と面会し、魔術研究と魔術師研究の接点、持つべき視点などを教示していただいた。さらには、私の研究の中心となる魔術師伝承の残されている未発表の文献(写本状態のもの含)について、それらを扱っている研究者の情報とも合わせて教えていただいた。その研究者たちとは、ヘブライ大学における研究調査が終了するまでに面会できるようすでに調整済である。2,3月の研究の中心は、ヘブライ語・アラム語以外の文献(ギリシア語・ラテン語・シリア語など)における二人の魔術師伝承の収集、およびそれらの文献自体に対する考察である。これらの作業から、二人の魔術師伝承の内容の考察は間もなく終了し、各伝承の年代・地域から、近日中にそれらの分布図を作成することが可能となる見通しである。
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