2010 Fiscal Year Annual Research Report
先行中胚葉が生み出す伸展刺激の脊索形成における役割
Project/Area Number |
10J02090
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
原 佑介 総合研究大学院大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 力学的刺激 / 細胞極性 / ガラス針を用いた力の測定 |
Research Abstract |
本研究ではアフリカツメガエルの原腸胚における2種類の中胚葉組織(先行中胚葉、中軸中胚葉)をモデル系とし、胚発生における力の存在と、それが隣接する組織にどのような影響を与えるのかを追究している。本年度は主に二種類の解析を行い、組織の移動が生み出す力学的刺激が隣接組織の細胞極性を制御することを示唆する結果を得ている。 1.先行中胚葉が生み出す力の測定 まず、胞胚腔蓋に裏打ちされた細胞外基質を培養皿へ写しとり、in vitroで先行中胚葉の移動を再現する系を確立した。続いて、先行中胚葉の前方に設置したガラス針を中胚葉の移動によってたわませ、そのたわんだ距離とガラス針のバネ定数をフックの公式に当てはめて、先行中胚葉が移動時に生み出す力を推定した。その結果、先行中胚葉が生む力は、20nNから50nNの範囲であることを見出した。これにより、組織の移動が実際に周囲の物体に対して力を生み出すことが示され、先行中胚葉が後続の中軸中胚葉を上記の力で伸展していることが示唆された。 2.伸展刺激が中軸中胚葉組織の極性形成に与える影響 伸縮性に富んだPDMS樹脂製のストレッチチャンバーを作成し、組織に対して人為的に伸展刺激を加える系を構築した。アクチビン処理により誘導した中軸中胚葉性の外植体をチャンバーに貼り付け、10%(=50nN)の伸展刺激を3時間持続的に加えた後に、極性化して紡錘形となった細胞の長軸角度を測定した。伸展を加えた外植体の細胞では長軸角度が伸展方向に垂直な向きへ揃いやすい傾向にあることを見出した。一方で、伸展を加えない外植体では、上記の傾向は見られなかった。この伸展および極性形成の方向は、それぞれ生体内での先行中胚葉の移動方向と中軸中胚葉の極性形成方向と同様であることから、実際の胚発生でも先行中胚葉の生む伸展刺激が中軸中胚葉の極性を正しい方向に調節している可能性が考えられた。
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Research Products
(2 results)