2011 Fiscal Year Annual Research Report
先行中胚葉が生み出す伸展刺激の脊索形成における役割
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10J02090
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
原 佑介 総合研究大学院大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 原腸陥入 / 力学的刺激 / 力の測定 / 細胞移動 / レーザーアブレーション |
Research Abstract |
本研究はアフリカツメガエルの原腸胚における2種類の中胚葉組織(先行中胚葉(LEM)、中軸中胚葉(AM))をモデル系とし、胚発生における力の存在と、それが隣接する組織に及ぼす影響を統合的に理解しようとしている。本年度は主に(1)と(2)の二種類の解析を行い、LEMの移動が生み出す伸展刺激がAMの形態形成を制御していること示す結果を得た。 (1)先行中胚葉が生み出す伸展刺激の存在とその大きさを明らかにする マイクロガラスニードルによる力の計測系に加え、レーザーアブレーション法を用いてLEMおよびAM領域における力分布のマッピングを試みた。レーザーアブレーション実験では、「LEMを持つ/持たないAM」状態の2種類の外植体を用意し、LEMが移動できる基質の上でしばらく培養した後にAM領域を紫外線レーザーで切断した。その結果、LEMを持つAMの方が持たないAMに比べて切断の反動が大きかった。この結果は、LEMの移動がAMに対して実際に伸展力を加えていることを示している。 (2)正常な原腸陥入における先行中胚葉の必要性の検証 本年度までの研究により、LEMの移動が物理的な力をnNレベルで生み出していることが分かっている。この生み出された力が生体内で何の役割を担っているかを確かめるために、全胚レベルでの解析を行った。原腸陥入運動が始まる段階の胚に対して、LEMを外科的に切除もしくはLEMの移動能を化学的に阻害する操作をしたときに、発生にどのような影響が生じるのかを観察した。両実験共に、コントロール胚ではほぼ正常な原腸陥入が行われた。一方、実験区の胚では高確率で原腸陥入異常が見られた。このときのAMを細胞レベルで観察すると、原腸陥入が異常になった胚では、正常な脊索に見られる「内外軸方向への細胞の整列」「正中線に向かった相互入り込み」が起こっていないことが分かった。これらは、移動能をもつ細胞の存在が伸展刺激を生み、細胞の整列や相互入り込みの制御を通して正常な脊索形成に寄与している事を示唆する重要な結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究を通して、LEMの細胞移動が生み出す力の存在・大きさと、隣接組織が受け取る力の存在を確かめることができた。また、そうした力が正常な原腸陥入に必要であろうことを支持する結果も得られた。したがって、当初の目的に沿って研究を進められていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
人為的に伸展刺激を加えたときの影響を観察する実験系を立ち上げたので、その系を用いて伸展刺激を加えている最中のリアルタイムイメージングを行い、人為的伸展刺激と細胞の振る舞いの関係を明らかにしていきたい。また、これまで収集したデータに関しても解析を進め、本年度中に論文にまとめて投稿する予定である。
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Research Products
(1 results)