2011 Fiscal Year Annual Research Report
シャウプ税制「崩壊」過程の研究―占領期から独立にかけての租税政策―
Project/Area Number |
10J02290
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
村松 怜 慶應義塾大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 財政学 / 財政史 / 租税論 / シャウプ勧告 / 地方税 / 占領期 / 所得税 |
Research Abstract |
本年度(23年度)は第一に、占領期の地方税制について研究を行った。シャウプ地方税制は1954年度の改正によって「解体」したと評価されているが、その「解体」が生じた理由として、地方財政調整費を抑制しようとする大蔵省からの影響に焦点が当てられてきた。しかしながら、その改正には大蔵省だけでなく、都道府県・市町村といった地方団体も関わっていたのであって、本研究では地方団体側に焦点を当てつつ、シャウプ地方税制の「解体」過程を明らかにした。その結果、地方団体側に有利であったはずのシャウプ地方税制は、一面において地方団体自らの要求によって解体させられたことが明らかになった。その内容は2011年5月の日本地方財政学会(於那覇)において報告し、その後、論文としてまとめた上で、10月に雑誌へ投稿した。現在はその査読待ちの状態である。第二に、昨年度からElliot Brownleeカリフォルニア大学名誉教授と取り組んでいた、シャウプ税制の所得税の問題に関する論文について、さらにリバイズを加えて上で、6月のLaw and Society Association Annual Meeting(in San Francisco)において報告を行った。その内容はシャウプ勧告に関する論文をまとめた書籍に所収される予定であるが、現在はCambridge University Pressのレビューを経て、修正中である。第三に、6月の学会報告の後、メリーランド州カレッジパークに三週間滞在し、米国国立公文書館においてGHQ/SCAPの資料収集を行った。同資料は、前述の地方税論文の加筆・修正においても大いに役立った。年度末からは、収集した資料も利用した上で、新たに占領期の法人税に関する問題を研究している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に示した点は、9で記したように、ほぼその通り研究を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は占領期の法人税問題に取り組むこととなるが、公開資料が極端に少ない日本において、どの程度資料を利用できるかという問題がある。この点は、これまですでに財務省総合政策研究所、産業経済研究所などにアクセスした上で、新たな資料を入手している。また、昨年度・一昨年度に収集したGHQ/QISCAP資料、ドッジ・ペーパーなどを利用することで、これまで明らかにされてこなかった事実を明らかにできるであろうと考える。
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