2010 Fiscal Year Annual Research Report
高分子ステント法による、超高強度ダブルネットワークゲルの高強度化手法の一般化
Project/Area Number |
10J02317
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中島 祐 北海道大学, 大学院・理学院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 高分子化学 / 材料科学 / 高分子ゲル / 高強度ゲル / 高機能ゲル / 一般化 / 高分子電解質 |
Research Abstract |
ある種のゲル内部でポリアクリルアミドゲルを重合し、2重網目ゲル(DNゲル)を作成すると、強度が格段に増大することが知られている。本手法を用いて様々な機能性ゲルを高強度化出来れば、ゲルの応用範囲が大きく広がると期待される。しかし、高強度DNゲルを作成するためには第1網目として膨潤度、弾性率が大きい強電解質ゲルを用いなければならず、膨潤度、弾性率が小さい中性ゲルを本方法で高強度化することは出来なかった。そこで本研究では、中性ゲルをベースにした高強度DNゲルの作成を試みた。そのためには、中性ゲルの物性を強電解質ゲルのそれに近づける必要がある。その手段として、中性ゲルの内部に強電解質高分子(分子ステント)を導入することでゲル内外の浸透圧差を増大させ、膨潤度・弾性率を大きくすることを考えた。最初に第1網目として、様々な化学種の中性ゲルを合成した。次に、本ゲル内部で強電解質高分子を合成した。このゲルは水中で大きく膨潤し、元の中性ゲルに比べて約10倍の膨潤度、弾性率を示した。最後に、膨潤した中性ゲル内部で第2網目であるポリアクリルアミドゲルを重合し、中性ゲルベースのDNゲル(St-DNゲル)を得た。引張試験による測定の結果、St-DNゲルは既存のDNゲルと同様、高い強度と靭性を示した。具体的には破断応力2MPa、破断歪2000%を達成した。またこれらの高強度化は、どのような化学種の第1網目や分子ステントを用いても起こることが分かった。さらに本技術を応用し、天然高分子プロテオグリカンを分子ステントに用いてヒト内皮細胞培養に適したDNゲルを、刺激応答性のポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)ゲルを第1網目に用いて衝撃を受けた部位が可視化されるゲルを開発出来た。結論として、強電解質ポリマーを用いることにより、幅広い化学種や機能を持った高強度DNゲルの合成が可能になった。本結果は、ゲルを幅広く応用する上で極めて重要であると考えられる。
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