2010 Fiscal Year Annual Research Report
食行動変容による抗ストレス作用発現の神経生理学的機構の解明
Project/Area Number |
10J02444
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
桑原 恵介 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 自律神経機能 / 食行動 / ストレス |
Research Abstract |
慢性ストレスが増加している現代社会においては、生体防御機構が破綻し、種々の健康問題が増加している。短期的絶食は、自律神経性の調節機構を介して生体のストレス状態を軽減する可能性が示唆されていたが、これまでヒトではその生理学的機構について十分に明らかにされていなかった。又、優れたストレス指標である自律神経機能の解析にはfast Fourier transform (FFT)又はautoregressive model (AR)からの心拍変動性のパワースペクトル解析が用いられてきた。運動条件等でFFTとAR間で異なる解析結果が報告されてきたことから、食行動の場合もFFTとAR間の解析結果の相違を確認した上でFFT又はARを適用すべきであるが検討されてこなかった。そこで本年度は、異なる食行動の前後におけるFFTとARにより得た心拍変動性の解析結果の一致性について検討した上で、各々の食行動における自律神経活動の特徴を明らかにすることを目的とした。対象は健康な成人男性で、絶食、標準食、高エネルギー食が心拍変動性に及ぼす影響をFFTとARを用いて解析し、一致性に関する統計解析により比較した。一致性の評価には二元配置分散分析、級内相関係数、Bland-Altman法を用いた。二元配置分散分析の結果、スペクトル解析条件の主効果、スペクトル解析条件と時間による交互作用は有意ではなかった。級内相関係数では、摂取前及び絶食群における食後に一致する時間帯で級内相関係数の95%信頼区間下限値が0.75を上回る場合が多かった。一方、Bland-Altman法では、FFTとAR間のLimits of agreementは食事条件及び摂食前後にかかわらず、いずれの心拍変動性指標についてもほとんどの場合で大きな値を示した。これらの結果から、FFTとARは、食事条件や摂食前後にかかわらず、類似しているものの異なる解析結果を算出することが示唆された。更に、ARによって解析を行った結果、食後の時間帯おいて、標準食群及び高エネルギー食群では交感神経活動優位の自律神経活動、絶食群では副交感神経活動優位の自律神経活動が確認された。
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