2011 Fiscal Year Annual Research Report
高分解能光学系ナノ計測による細菌べん毛モーターのエネルギー入出力の同時計測
Project/Area Number |
10J02448
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
森本 雄祐 大阪大学, 生命機能研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ナノマシン / 分子モーター / べん毛モーター / プロトン駆動力 / ナノ計測 / 細胞内pH / エネルギー変換 / 蛍光顕微鏡 |
Research Abstract |
バクテリアのプロトン駆動型べん毛モーターは、細胞膜内外に形成されるプロトンの電気化学的ポテンシャル差を利用して駆動する回転モーターである。本研究では、べん毛モーターのエネルギー変換機構を解明することを目的とした。 固定子蛋白質MotAと回転子蛋白質FliGとの静電的相互作用によってモーターのトルクが発生すると考えられている。本年度の研究では、まず、トルク発生の分子機構を明らかにするために、これまでに報告されているMotA-FliG間の静電的相互作用部位を詳細に解析した。その結果、固定子のモーターへの局在化のみに重要な荷電残基と、トルク発生に直接的に関与している荷電残基をそれぞれ特定することができた(投稿準備中)。 また、べん毛モーター局所の正確なエネルギー状態を知るために、pH感受性蛍光蛋白質フルオリンをプローブとしたpHイメージングシステムにより、モーター近傍の局所pH測定を行った。その結果、べん毛特異的輸送装置構成蛋白質FliH,FliIの欠損により、細胞質全体のpHは変化しないが、モーター近傍局所のpHでは違いがあることが判明した(投稿準備中)。 以上の成果から、べん毛モーター近傍の局所pHが測定可能となり、モーターにとっての正確なエネルギー状態を考慮して、モーターのトルク特性を議論することが可能となった。本計測システムの応用は、様々な膜タンパク質のエネルギー変換機構の解明に繋がるものと期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の成果から、バクテリアの細胞全体でのエネルギー状態と膜直下局所のエネルギー状態では違いがあることが判明した。べん毛モーターのエネルギー変換機構の解明に対して、飛躍的に大きな成果である。また、本成果は、これまでの生体エネルギー論の通説を覆すものであり、生物学的に極めて重要な発見である。本研究で開発したpHイメージングシステムは、様々な膜タンパク質の機能解明に大きく貢献するものと期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題では、バクテリアべん毛モーターのエネルギー変換機構の解明を目的として研究を遂行した。本研究の成果の一つとして、固定子MotA、回転子FliG間の相互作用において、モーターのトルク発生に直接的に関与している荷電残基を特定できた。この結果を踏まえて、X線結晶構造解析や電子顕微鏡法によって現在進められている固定子、回転子蛋白質の構造からトルク発生機構の詳細を明らかにする。また、高分解能pHイメージングにより明らかになったモーター近傍局所のpHを考慮することにより、正確なエネルギー状態を把握した上で、べん毛モーターの回転計測によってトルク特性を測定し、モーターのエネルギー変換機構の解明を目指す。
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Research Products
(15 results)