2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10J02499
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
堤 康雅 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 超流動ヘリウム3 / マヨラナフェルミオン / エッジカレント / 固有角運動量 |
Research Abstract |
本年度は、異方的なp波フェルミ超流動体である超流動ヘリウム3に注目し、エッジに束縛された準粒子がマヨラナフェルミオンとして振る舞う現象を理論的に研究した。マヨラナフェルミオンは、粒子と反粒子が同一であるフェルミオンとして理論的に提唱されたが、実験では見つかっていない。また、ニュートリノがマヨラナフェルミオンである可能性が議論されているが、未だに決着はついていない。最近、スピン三重項超伝導体等の物質中にもマヨラナフェルミオンが存在するということが理論的に示され、マヨラナフェルミオンの初めての観測が期待でき、注目が集まっている。 本研究は、実験での観測が期待できる比熱、エッジカレントへのマヨラナフェルミオンの寄与を微視的な理論に基づいて定量的に計算した研究である。本研究で注目した超流動ヘリウム3には、A相とB相の異なる超流動相が存在しており、それらの相間でトポロジカルな性質が異なっている。その反映として、それぞれの相に現れるマヨラナフェルミオンの分散関係が定性的に異なることも計算により示した。また、それぞれの相に流れるエッジカレントの種類も異なっており、A相表面ではマスカレントが、B相表面ではスピンカレントが流れている。特に、A相表面で流れるマスカレントは、超流動ヘリウム3に残された長年の謎である固有角運動量の問題と密接な関係があると考えられ、本研究で行ったマスカレントの定量的評価は、固有角運動量の問題に答える手がかりとなる。 本研究の成果は、3編の査読付論文として学術雑誌に掲載された。さらに、国際会議、国内会議での発表も行ったことで、広く公表することができた。
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Research Products
(8 results)