Research Abstract |
1. ハダニ類の休眠は越冬に必須であり,光周期によって調節される.したがって,人為的に光周期を調節して休眠を阻害すれば,冬季における死滅が期待できる.そこで,この休眠阻害条件を明らかにするために,白色LEDを使用した省スペース・低コスト・多機能型の光周反応調査システムを開発した.なお,パルス幅調節法を用い,明期,光強度および暗期中断条件(長さ・光強度・タイミング)を独立に制御することを可能にした.これを用いて調査した結果,明期延長および暗期中断がハダニ類の休眠阻害に有効であることが明らかになった. 2. ハダニ類の我が国土着の天敵であるミヤコカブリダニの長期貯蔵を可能にする物理環境条件を調査した.その結果,気温5℃およびRH100%の条件下では雌成虫の半数致死日数は65日で,貯蔵後の生殖能力の低下は見られなかった.この長期貯蔵法(低温高湿法)は,ミヤコカブリダニの安定的な供給に寄与すると期待できる. 3. ハダニ類は紫外線に感受性が高く,低線量でも致死効果があることが知られている.すなわち,紫外線はハダニ類防除への利用が期待できる.そこで,ハダニ類の紫外線感受性を効率的に調査するために,上記の光周反応調査システムを改良し,紫外線および白色LEDを使用した紫外線照射システムを開発した.なお,このシステムもパルス幅調節法を用い,明期および光強度を紫外線および白色光それぞれ独立に制御することができる. 4. 微小移動運動補償装置を用いて紫外線ならびに可視光に対するハダニ類の行動応答を解析した結果,紫外線を忌避し,可視光に誘引されることがわかった.さらに,可視光に対する誘引反応は,休眠に伴い消失することがわかった.今後は,紫外線および可視光調節によるハダニ類の行動制御といった応用面へ展開するとともに,季節的に変化する光感受性の生態学的意義も追求していく予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
休眠研究では,室内実験用のシステム構築から明期延長および暗期中断処理による休眠阻害効果の検証まで進展することができた.さらに,行動解析から,休眠に伴う可視光感受性の消失を示すことができた.一方,睡眠研究では,室内実験用のシステム構築がまだ完成していない.今年度の早期にこれを完成させ,実験を実施したい.紫外線感受性研究では,室内実験用のシステムはすでに構築され,試験サンプルも順調に維持されている.青色光認識研究では,果樹園内の光環境の周年変化を調査し,植物フェノロジーによってキャノピー内光環境が大きく異なることが判明した.また,天敵の長期貯蔵における新手法として低温高湿法を開発することもできた.
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Strategy for Future Research Activity |
1. 休眠阻害に有効な光波長を明らかにし,野外試験用の光照射システムの構築ならびにその効果を検証する. 2. 睡眠研究用の行動解析システムを構築し,日周行動に対する生理活性物質の効果を検証する. 3. 紫外線感受性の種間差を調査し,害虫防除における紫外線利用の応用範囲ならびに体色と紫外線感受性の関係を調査する. 4. 野外における植物キャノピー内の光環境および温湿度の季節変化を実験室内で再現するシステムを構築し,それら動的環境に対するダニ類の生理生態反応を調査する. 5. ガス環境調節による効果的な天敵貯蔵法および害虫防除法を開発する.
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