2011 Fiscal Year Annual Research Report
感潮域における持続可能な環境保全手法の確立に向けた地形変動予測モデルの開発
Project/Area Number |
10J02689
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
岩崎 理樹 北海道大学, 大学院・工学院, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | タイダルクリーク / Horton則 / 水路長分布 / 浸透流 / フラクタル / 数値計算 / ダルシー則 |
Research Abstract |
[1]感潮湿原に形成される水路網形状の定量的評価及びそれに対する支配パラメータの抽出に不可欠である水路網形状の定量評価法について,陸域の河道網の定量化手法であるHorton則を用いて検討を行った.これを昨年度実施した小型水槽実験における潮汐波形の異なる条件で得られた水路網形状,実験と同一条件で実施した数値計算結果及び航空写真から得られる現地スケールの水路網に適用し以下の結果を得た.1)Horton則により等級化された各位数の水路長の最頻値は位数の増加に伴い増加する一方,水路長の確率密度分布は位数に対する依存は小さく概ね対数正規分布的となる.2)潮汐波形の相違が水路網の水路長分布に有意な影響を与えることが示唆された.3)水路網の空間スケールが変化しても各位相の水路長がもつ統計的性質は変化しない.4)数値計算モデルにより再現される水路網の無次元水路長スペクトル形状は実験や現地と同様の傾向があるが,すべての位数で水路長が同じレンジに位置しており,位数の増減による水路長の変化が表現されていない. [2]昨年度に構築した平面二次元表面流モデルにダルシー則に基づく飽和二次元浸透流モデルを結合し,地盤内外の流れを表現可能なモデルを構築した.これを用いて浸透流の影響が卓越する透水係数での地盤条件下において,浸透流が水路網形状及び発達過程に及ぼす影響を調べ,以下の結果を得た.1)地盤内外の水位差が小さい水路初期発達過程においては,浸透流の影響が小さい一方,水路網が発達し潮位変動に伴う地盤内外の水位差が大きくなる条件下では,水路網形状が複雑化するとともに,侵食・堆積量が大きくなる.2)[1]で提案した水路長分布に対する統計解析により浸透流を考慮することで小スケールの水路の形成が促進されることが示唆された.3)浸透流出が水路網発達に寄与する流出体積を増大させることから,水路の侵食量が増大する.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた地盤内外の流れを表現可能な地形変動モデルを構築し,水路網に対する浸透流の影響を考察するとともに,この水路網形状の定量的評価手法を提案した.これらの成果は国内外の学会・論文に掲載されており,研究計画は順調に進展していると考える.
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度行った予備実験及び水路網の定量評価法を下に室内実験を実施し,感潮湿原に形成される水路網の形成・発達に対する支配的な物理パラメータの抽出を行う.これらの物理パラメータ依存性をもとに,水路網形状及び発達過程を決定する物理モデルを構築するとともに,数値計算モデルの予測可能性を議論する.最終的にこれらのモデルを現地スケールの水路網に適用し,本研究課題の目標である感潮域における持続可能な環境保全手法の確立に向けた地形変動予測モデルについての検討を行う.
|